しかし、日本の被害者運動は、被害者の権利保護までしかたどり着けなかったようだ。

いずれにしても、海外では、直接的には犯罪原因論の後退によって、間接的には被害者学の台頭によって、犯行現場(場所・状況・環境)を研究する犯罪機会論が防犯対策を担うようになった。それは、「事後(刑罰)から事前(予防)へ」「人から場所へ」というパラダイム・シフト(発想の転換)だった。

もっとも、犯罪原因論も影響力を完全に失ったわけではなく、決定論的な色彩を薄め、確率論的な「発達的犯罪予防論」へと変容していった。それは、「原因としての決定因子から傾向としての危険因子へ」というパラダイム・シフトだった。

こう見てくると、日本では、依然として犯罪原因論が闊歩しているし、修復的司法も導入されていないのだから、ほとんどの人が犯罪機会論を知らなくても、無理からぬことかもしれない。だとしても、いつまでも防犯後進国であっていいはずはない。

次回は、犯罪機会論を構成する個別の理論について解説する。犯罪機会論が抽出した「犯罪者が選んでくる場所」の共通点を詳しく説明したい。

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