さらに、4つのシナリオにおける2000年代から2090年代までの気候帯別の死亡率の季節性の形状を図示すると次のようになりました。

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この図は、4 つの気候変動シナリオ(共通社会経済経路[SSP]シナリオ SSP1-2.6、SSP2-4.5、SSP3-7.0、および SSP5-8.5)の下での 2000 年代から 2090 年代までの4つの気候帯での死亡の季節性を⽰しています。W1-W6 は温暖な季節の⽉(北半球では 4 ⽉から 9 ⽉、南半球では 10 ⽉から 3 ⽉)、C1-C6 は寒冷な季節の⽉を表します。1.0 ‒ 1.3 でラベル付けされた円は、年間の各⽇の死亡率推定値を最⼩死亡率推定値と⽐較した⽐で⽰しています。© 2024 Madaniyazi L, et al. Published by Elsevier Ltd. This is an Open Access article under the CC BY-NC-ND 4.0 license.

縦は上から順にSSP1、SSP2、SSP3、SSP5、横は左から熱帯、乾燥気候帯、温帯、大陸性気候帯です。W1-W6は温暖な季節の⽉(北半球では4⽉~9⽉、南半球では10⽉~3⽉)を示し、C1-C6は寒冷な季節の⽉(それぞれ10月~3月、4月~9月)を表しています。

調査の結果、すべてのSSPシナリオにおいて、乾燥気候帯、温帯、⼤陸性気候帯では2000年代から2090年代にかけて、温暖な季節の死亡率は増加し、寒冷な季節の死亡率は減少すると予測されました。ただし、寒冷な季節の死亡率は依然として⾼い⽔準を維持すると考えられます。

この傾向は、温室効果ガスの低い排出シナリオから⾼い排出シナリオに移るにつれて強まり、最⾼の排出シナリオ(SSP5-8.5)のもとでは季節性を⼤きく変える可能性が示唆されました。つまり、死亡者数の最大ピークは寒冷な季節から温暖な季節に変わるとともに、春や秋との差も広がり、季節性の影響が増⼤するという結果が示されました。季節性の影響は、特に今世紀後半に顕著に現れました。

一方、熱帯では、季節による死亡率の変化は他の気候帯と比べると顕著には見られませんでした。

研究者らは、死亡率の季節性は気温だけではなく環境変数、社会変数、人口動態変数などにも起因すると話しています。また、熱帯では降雨量に影響されたり、今後、気温上昇に対して集団適応する可能性があったりすることなどにも触れて補足しています。

今回の研究成果では、気候変動によって将来的に死亡率の季節性が変化した場合、医療供給体制もそれに応じて対応する必要があることも示唆されました。

たとえば、①温室効果ガスの高排出シナリオでは、死亡率のピークが温暖な季節にシフトすると考えられるため、医療資源の配分を再考すべきである、②特に乾燥気候帯、温帯、大陸性気候帯では、季節性の死亡率は夏の暑熱と冬の寒さによって2つのピークが現れる可能性が高く、双⽅の医療需要に対応することが求められる、③より厳格に気候変動対策をしなければ、特に熱帯や温帯では将来的に季節性に起因する死亡率の割合が高まる見込みがあり、それに応じた医療システムを構築する必要である、などです。

プラネタリーヘルスは、地球環境と人の経済活動の共存を、より身近に、切実に考えるきっかけとなります。これからさらに普及する概念と思われるので、今後もぜひ注目してください。

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