この世に存在するもので最長なのは宇宙でしょう。地球から観測できる「宇宙の果て」は、光行距離で約138億光年とされています。1光年は約9.5兆キロメートルなので、138億光年をメートル表記すると10の26乗のオーダーになります。新しい接頭辞を使うと、約0.13ロナメートルになります。

いっぽう、この世の最小の長さとされる「プランク長」は1.616229×10のマイナス35乗メートルです。新しい接頭辞を使っても0.000 01クエクトメートルとなり、もう一段階小さい10のマイナス33乗の接頭辞がほしくなります。

次に時間を見てみましょう。知られている放射性同位体で最も半減期が長い物質はテルル128です。約69×10の30乗秒、つまり69クエタ秒で二重ベータ崩壊し、キセノン128になります。宇宙のインフレーション理論は、宇宙は誕生直後の10のマイナス36乗秒後から10のマイナス34乗秒後までの間に急激な膨張(インフレーション)を引き起こしたというモデルです。つまりインフレーションが終わったのは、宇宙の始まりから0.0001クエスト秒後になります。

質量では、地球は約6ロナグラム、太陽は約2000クエタグラムと考えられています。軽いものでは電子の質量が約9.1×10のマイナス28乗グラムなので、910クエストグラムになります。

増え続けるデジタルデータ量が接頭辞を拡大する

こうして見てみると、新しい接頭辞はあれば便利かもしれませんが、一般の生活ではあまり使い道はなさそうです。では、なぜこのタイミングで新たに規定されるのでしょうか。背景には、世界中で消費されるデジタルデータ量の爆発的な増加があります。

米国の調査会社IDCによると、2010年に全世界に存在したデータ量は1.227ゼタバイトでした。1ゼタバイトは世界中の砂浜の砂の数に相当すると言われています。データ総量は2020年には59ゼタバイトに到達し、2025年には175ゼタバイトになると予測されています。ゼタは10の21乗のオーダーですが、2030年代には世界に流れるデータ量は10の24乗のヨタのオーダーに乗るという予想もあります。

宇宙の果てや星の質量の表記のため以上に、人が作り出したデジタルデータのために接頭辞を拡大しなければならなくなる。これも科学技術の発展の象徴的な出来事かもしれません。

※編集部注:本文に一部誤りがありました。読者の皆さまにお詫び申し上げますと共に以下当該箇所を修正致しました。(2022年5月2日10時44分)
✕ そこで、たとえば0.000000001グラムの代わりに1「ピコ」グラム(10のマイナス9乗グラム)と表記するのがSI接頭辞です。
◯ そこで、たとえば0.000000001グラムの代わりに1「ナノ」グラム(10のマイナス9乗グラム)と表記するのがSI接頭辞です。

(2022年11月22日14時44分)
✕ 約69×10のマイナス30乗秒、つまり69クエタ秒で二重ベータ崩壊し、
○ 約69×10の30乗秒、つまり69クエタ秒で二重ベータ崩壊し、

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