北村氏の裁判の判決文で画期的なのは、雁琳氏のカンパについても言及していることだ。いわく、雁琳氏が「本件訴訟のために公然といわゆるカンパを募ることは」原告を貶める「同調者をあおるものといえる。これらは、原告の慰謝料増額事由として評価すべきである」。
その結果が、原告側の要求330万円に対し、220万円の支払いを求める決定なのだ。これは、誹謗中傷によって耳目を集め、多額のカンパを獲得するビジネスモデルに対して、慰謝料増額事由に相当する可能性を示す、注目すべき判決だといえる。北村氏自身も次のようにコメントしている。
「このようなビジネスモデルを放置しておくことは世の中全体に悪い影響を与えます。そのままにしておくと真似をする人も出るでしょう。今回の判決で、こうした他人を煽ってお金を集める行為が勘案されたのは画期的なことだと思っています。今回の判決が、ネットで中傷を受けている方々にとって良い先例となることを祈っております」。
「誹謗中傷ビジネス」を止める第一歩
もちろん、この判決は第一審にすぎず、雁琳氏が控訴した場合、覆る可能性は残っている。またこの判決を、カンパによって訴訟費用を集めた他のあらゆる裁判に単純に当てはめることができるわけでもない。さらに、雁琳氏の自己申告が正しいとするなら彼は450万円を集めたわけであり、220万円と他の経費を支払ってもなお、それなりの額が手元にのこる計算になる。このことから、こうしたビジネスモデルが直ちに成り立たなくなるかといえば、そうではないだろう。
しかし、この判決は長い道のりの第一歩となるだろう。このビジネスモデルは、多くの人の悪意を幅広く集積することによって成立する。そしてその悪意が向けられるのは、多くの場合、フェミニズムのような、既存の社会に内在する差別を糾弾する少数派の権利獲得運動だ。つまり誹謗中傷の収益化に反対することは、差別に対する戦いの一部でもあるのだ。
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