なぜなら、悪魔と見られたくない指導者にとって、第三者的な立場から「悪魔と見るべきでない」と言ってくれる存在はとても貴重だからだ。「戦略としての脱悪魔化」の中には、自分に都合の良い「警鐘としての脱悪魔化」を増やすことも当然に含まれ得る。
プーチン氏やロシア軍を例に挙げれば、実際のところ、多くの人が問題視するのは、彼らが悪魔か否かということよりも、国際法違反の軍事侵攻をしたという事実それ自体だろう。
「他者の存在を丸ごと否定するな」という警鐘は、その他者がした具体的な行為の問題を少しも減らさない。「警鐘としての脱悪魔化」がそうした次元の違いを曖昧にし、明晰な思考を妨げ、批判を躊躇させないよう、注意はしておきたい。
「悪魔だ」と「悪魔化だ」は正反対に見えて、実は似た効果を持ち得る。警戒は双方に必要だ。思考の省略は魅力的だが、害は小さくない。
<2022年4月26日号掲載>

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