民間企業を利用して世界を変える権威主義国

SNSや検索サービス提供しているビッグテックは、基本的には利益を追求する民間企業であり、「現地の法律を遵守する」ことを言い訳にして当局の監視や検閲を手伝うことがある。また、経済的な便益を優先して、選挙関連の情報提供をコピペで済ませ、時には誤った情報を掲載することもある。モデレーションが適切でないことも少なくない。

その一方で、社会のインフラとして人々がこれらのサービスに依存していることも事実だ。選挙を始めとする活動や災害時の連絡に大きな影響を与えるにもかかわらず、法的、制度的な規制はほとんどなく、中国の検閲がアメリカのBingでも行われている状態だ。

民主主義国でこうした事態に対応するためには、EUのように時間をかけて合意を形成し、法制度を整備し、実行しなければならない。これに対して中国などの権威主義国では時間のかかるプロセスを飛ばして必要な措置を実行できる。民間企業が関係国の法制度に従う場合、対応の早い権威主義国の法制度に先に従うことになる。この非対称性によって、法制度を遵守しようとする民間企業は権威主義国の制度に早く対応することになる(なぜなら早く法制度が施行されるから)。一方、民主主義国には実質的な法制度の整備が権威主義国よりも遅れる構造的な問題がある。

2011年から2022年の間に78カ国で制定された105の偽情報対策法の多くが、権威主義国で言論の抑圧を目的としていることがこの問題を象徴している。法制度の整備に比例して、この法律に違反して投獄されたジャーナリストが増加している。

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(出典:「Chilling Legislation: Tracking the Impact of "Fake News" Laws on Press Freedom Internationally」Center for International Media Assistance CIMA、2023年7月19日、https://www.cima.ned.org/publication/chilling-legislation/)
 

2024年は世界人口の半分以上が投票を行う選挙の年であり、インド、インドネシア、アメリカなど注目されている選挙も多い。民主主義国の民間企業が、意図せず世界を変えるのを目の当たりにするかもしれない。

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