<アメリカ大統領選で行われている監視と誘導のツールは、パブリックからプライベートへとシフトしていた......>

アメリカ大統領選も大詰めとなった10月の終わりに、MIT Technology Review(2020年10月28日)、The New York Times(2020年10月28日)各誌に大統領選に投入された新兵器についての記事が掲載された。その新兵器とは、有権者監視アプリとテキストメッセージとワレットである。

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30億通のテキストメッセージを送信

まず、テキストメッセージについて説明したい。テキストメッセージとは携帯のSMSなど直接個人宛に届くメッセージで通常は1対1のものであるが、それを大量に一斉送信する。今回の選挙では主としてSMSが用いられた。この手法は以前の記事でもご紹介したように2018年の中間選挙において一部地区で使用されたものだ。前掲のMIT Technology Reviewによれば2016年にも一部で使用されていた。

The Conversation(2020年9月21日)は、今回の選挙で大量のテキストメッセージが用いられていることをレポートした。1日に12通届くことも珍しくないという。

今回の選挙では11月3日までにアメリカ国内の有権者は30億通の政治的なテキストメッセージを受信すると推定されている。アメリカの有権者数はメッセージよりもはるかに少ない2億3千4百万人強である。支持政党が確定していない地区(スイング・ステート)や重要な有権者グループに多くのテキストメッセージが送信されると見られている。

今回、大規模に使用されるようになった背景には、この4年間で個人向けにカスタマイズしたテキストを大量に送信するサービスが開発されたことと、選挙活動に関する法規制が通信技術に追いついていないことがあげられる。ほとんど規制のない状態で正体を隠し、キャンペーンを実行できるのだ。SMSは発信者がわかるが、電話しても応答はなく、電話番号は外注業者のもので、法規制がないため発注者を開示する義務はない。

1対1のメッセージは強い影響力と秘匿性を持つ

テキストメッセージの影響力を甘く見てはいけない。テキサス大学オースティン校のthe Center for Media Engagementのレポートによれば、親しみを感じさせ、高いレベルの影響力を持つ強力なツールだと指摘している。しかもテキストメッセージの開封率は70〜98%とメールや電話に比べ非常に高い。さらに法規制もまだなく監査も及ばないのだ。

おかげでフェイスブックやツイッターから閉め出されたフェイクニュースはテキストメッセージに移り、テキストメッセージはフェイクニュースの温床になりそうだ。たとえば夏に行われたフロリダの選挙では候補者が脱落したというフェイクニュースがテキストメッセージで拡散された。テキストメッセージに力を入れているのはトランプ陣営である。今年6月以降、トランプ陣営から発信されたメッセージはバイデンの約6倍となっている。

現在、GetThruHustleOpn SesameRumbleupconversoなどの企業が大量のテキストメッセージを送信できるサービスを提供している。

双方とも有権者監視アプリを配布していた