ゾンビの仮装者は、まずこのようなロメロの系譜をしっかりと押さえなければならない。繰り返すようだが、ゾンビは生前一般市民であるので衣装にあっては「ごく自然な街頭での格好」に血のりを付けるなどするべきである。特定の職業における格好に着替えるのはそもそもの流儀に反するのである。
またゾンビはその歩行速度に差異はあるものの、「(基本的には)会話しない、(生者以外を)食べない」存在であるから、仮装の最中に飲食をすることは出来ないはずであるし、コミュニケーションもとってはならないと解釈することもできる。勿論ウェーイと言って写真を撮ったりインスタグラムに上げるのもご法度である。ゾンビは原則的に知的行動をしないからだ。このような事実を踏まえると、現在の日本におけるハロウィンの「ゾンビ」はずいぶんといい加減なものである。
「人間とは何か。人間性とは何か」を高らかに謳いあげたゾンビを、社会への警鐘や風刺を無視した文脈の中で単なるお祭り騒ぎに使うのはいかがなものだろうか。ゾンビとはもっと厳粛で、静かで、重大なものでなければならない。チャラチャラするなとは言わないが、余りチャラチャラしすぎるのはゾンビの本質が摩耗するので危険だ。繁華街からの嬌声は私を暗鬱な気分にさせる。現在の浮ついた風潮には断固抗議したい。