非同期型ワークとは何か?

ここでいう非同期(Async)とは、「誰かの応答を待つことなく、他者と歩調を合わせずに仕事ができる」という意味である。非同期は、仕事をする場所と時間を自分で決めることができ、自律的に仕事を進めていくワークスタイルである。上司に絶えず監視されることもなく、自宅待機も必要ない。作業のパフォーマンスを評価するのは、出社することではなく、仕事の質なのだ。

非同期型の仕事は場所を選ばない。特定の時間に合わせ、待機しなければならない「同期型の仕事」は、異なるタイムゾーンに長期の旅行や居住することが困難となる。米国人がアジアから仕事をするのは難しく(ニューヨークの午前8時が東京の午後9時)、ヨーロッパ人が米国から仕事をする(ベルリンの午前8時がニューヨークの午前2時)のも難しい。非同期であれば、タイムゾーンの制約を受けず、インターネットがあれば世界のどこにいても仕事ができるのだ。

同期型の仕事では、上司や同僚たちに気を使い、自身の集中力が低下してしまうこともある。非同期型の仕事では、一人で自分の考えに没頭することができ、「ディープワーク」として知られる創造的なフロー状態に入ることもできる。

米国ジョージタウン大学のコンピューター・サイエンスの教授で、『ディープワーク: 気が散る世界で集中して成功するためのルール』(2016)の著者であるカル・ニューポートは、「ディープワークを実行する能力は、私たちの経済においてますます価値が高まっていると同時に、ますます希少になっている。その結果、このスキルを培い、それを自らの中心に据える少数の人々の労働生活は繁栄する」と指摘している。つまり、ますます非同期型の人々が、同期型の人々よりも質の高い仕事をアウトプットできるようになるという。

takemura20210511_4.jpg
カル・ニューポート著『ディープワーク:気が散る世界で集中して成功するためのルール』(2016)。ディープワークとは、日々のメールやソーシャルメディアに翻弄されるのではなく、複雑な情報を素早くマスターし、より少ない時間でより良い結果を生み出すことができるスキルのこと。

ストレスのない非同期

非同期型ワークスタイルの最大の強みは、すべてのことをピーク時以外に行うことができることだ。道路が空いているときにクルマを走らせ、皆が仕事をしている時間にビーチに行くこともでき、オンシーズンよりホテルや飛行機代が安く、混雑しない時期を予約できる。

これらのことは、非同期型ワークの人たちにとって、ストレスを減らし、健康を増進し、幸福感を高めることにつながるという主張を裏付けている。仕事の場所と時間を自分で選択することで、よりバランスのとれた健康な生活を送ることができるのだ。

非同期派 vs 同期派

大きなメリットがあるため、非同期で仕事ができる人とできない人の間には、大きな溝ができるかもしれない。非同期で仕事ができる人(非同期派)は、ストレスが少なく、人混みから離れ、質の高いディープワークに集中でき、余暇を楽しむ機会も多くなる。好きな場所で暮らせることで、より自由で平和な生活を送ることも可能となる。

それができない人たち(同期派)は、月曜から金曜までの9時から5時までの旧来の労働時間に縛られ、同僚に気を取られ、平凡な仕事を繰り返し、週末にだけ余暇を過ごす。渋滞や行列に巻き込まれてストレスを感じ、仕事のために1つのタイムゾーンに縛られることになる。

同期派と非同期派の分かれ目は、一方が同じ自由を持っていないために、共存が難しいことだ。同期派は、自分の生活を同じ同期派の勤務時間に合わせて制限するため、最終的には非同期派と同期派は分離していくかもしれない

同期派の人たちは、一週間ずっと週末を待ち、一年の間では夏休みを待ち望む。一生涯ではリタイアの日を待つことになる。一方、非同期の人たちは、大げさに言えば、毎日を日曜日として過ごすのだ。

欧州のデジタル・ノマド拠点