一方、強硬姿勢が予測される下院共和党にも「財政戦争」を首尾良く進めるには幾つかのアキレス腱が存在している。そのアキレス腱とはトランプ減税、国防費増額、そして上院共和党の裏切りである。

共和党はトランプ政権下ではトランプ減税・規制廃止の効果などでインフレの2倍の給与の伸びがあったと主張しており、債務上限問題に際しても減税の旗を降ろすことは考えられない。また、緊迫する国際情勢の中、対GDP比で冷戦期の半分にまで落ち込んだ国防費を再び増加させよと主張する党内の声も無視できない。満額でなくともこれらの主張を反映させることがバイデン政権側との財政交渉を巡る妥協点となるだろう。

そして、仮に共和党が上院で過半数を確保したとしても、アラスカ州のムルカワスキー、メイン州のコリンズなどの民主党寄りの投票行動を行う名ばかり共和党連邦上院議員が数名存在している。彼女たちのせいでトランプ政権時代はオバマケアの一掃に失敗した経緯がある。そのため、フィリバスター(議事妨害)を回避するための60票どころか、共和党が民主党の議席を数議席上回った程度では過半数50票を獲得できるかすら実は怪しい。さらに、バイデン大統領は予算・法案に対する拒否権を有しており、共和党下院の強硬姿勢がどこまで通用するか見通しは不明だ。

したがって、双方が合理的に考えた場合、激しく罵りあいながらも、最後は互いに譲歩することが正解ということになる。

米国は我々が予想する以上に政治的分断が深刻化している

しかし、現代米国政治において、そのような理性的な合意形成が行われるかは一抹の不安が残らざるを得ない。米国の現状は我々が予想する以上に政治的分断が深刻化している。新たに当選してくる共和党のトランプ派議員、民主党の左派系議員らにとって敵に僅かでも妥協することは敗北を意味する。最悪の場合、米国史上初の債務上限引き上げの不成立となる異常事態が起きる可能性も無視できない。

バイデン政権後期の米国は、混沌としつつある国際情勢だけでなく、制御不能な国内政治にも向き合う試練の時間を迎えることになるだろう。今後、一層米国政治から目が離せない日々が続くことになりそうだ。