<ワクチン接種証明書があれば、国と国との行き来も元通り? 2年半ぶりに国際線に乗ってアメリカからオランダに向かった大江千里の搭乗記>

コロナというタチの悪い感染症が世界的にはやりだしたかもしれないという理由で日本ツアーをキャンセルし、アメリカに戻ったのが2020年2月のこと。

あれから2年半近くがたった6月半ば、オランダの首都アムステルダムで公演するため久しぶりに国際線に乗った。出入国について調べると、アメリカからオランダへの入国は「完全にワクチン接種を完了しているなら問題なし。PCR検査による陰性証明の提出も不要」だという。

僕は用心深いので、前日にクリニックへ行きPCR検査を受けた。そのクリニックには保険に入っていない人は4月から50ドルかかるという張り紙があった。

僕は保険があるから無料で受けられ、20分後には「陰性」通知をもらった。そして事前にワクチン接種の履歴証明を航空会社のホームページにアップすれば、空港でのチェックインは簡単だ。

ジョン・F・ケネディ国際空港の見慣れたラウンジはコロナ前よりも混んでいる。芋の子を洗うように混み合う200人ほどの99%は既にノーマスク。ラウンジの外はだいたい10%くらいだろうか、マスク姿の人を見掛けた。

ラウンジのような場所だと安心感がぐんと増すのかもしれない。しかし飛沫を飛ばしながら電話でビジネストークをする人の横だと怖いので、僕は遠慮なくマスクを着ける。

去年の秋、公演のためのアメリカ国内旅行が2回あったが、交通機関やラウンジなどでは全てマスク着用だった。ほんの少しずらしてしゃべるだけで厳しく注意されたものだ。それに比べると、今や完全に世界は開いたという印象を受ける。

コンサートの客席もノーマスク

搭乗する。僕はビジネスクラスだったが、マスク率は30%くらいで、エコノミーも同じくらいだ。離陸直前になって、事前申請していたアップグレードでなんと運良くファーストクラスの1A席へ移動できた。ここで驚く。ファーストのマスク率は「0%」だった。

オランダに入国すると、迎えに来てくれた商工会議所の方が「みんなマスクをしてないでしょう? でも感染者はまだいるので怖いです」と僕につぶやいた。もちろん彼女も僕もマスク着用だ。運転手はノーマスク。

1日目は図書館カフェでコンサートを行ったが、お客さんにマスクを着けている人はいなかった。ニューヨーク以上にオランダはコロナ禍から明けて、以前の生活を楽しんでいるように僕の目には映った。

翌日、日本とオランダの友好関係をアピールするフェスが3年ぶりに行われた。ここでもマスクを着けている人はごく少数だ。僕は演奏中は外しそれ以外はマスクをする。そして、 人が周りにいないときにはマスクを外して新鮮な空気を吸う。

国と国との行き来もワクチン証明書があればコロナ前の生活なんだなと、肩の荷が下りて気が楽になった。

コロナで僕が経験したのは、リスクを背負って生きること、誰かの許可がなくとも人生は好きに設計できること、そして今日をシンプルに自分のために生きることだ。

このコラムが掲載される頃、僕はミルウォーキーの音楽フェスで野外の空気を大きく吸い込みながら演奏しているだろう。