驚かれるかもしれないが、僕はジャズのメロディーを歌詞と一緒に書いている。実はジャズミュージシャンがセッションに選ぶスタンダード曲は全てに歌詞がある。
つまり、もともとは歌詞があるスタンダード曲をインストゥルメンタルにして演奏しているのだ。詞があるからこそ、景色や温度やドラマが分かる。
ジャズを始めた頃、僕は「ポップスの書き方をそぎ落とさないとジャズ曲は産めない」と考え過ぎるあまり、頭で書いていた。
そのうち、メロディーを書くときに音符の下に歌詞を同時に作って書き込んでみるようになった。そう、ポップスのときにやっていたのと同じ、歌詞とメロディーの同時作曲法だ。
僕の4枚目のジャズアルバム『answer july』はジャズ界の重鎮である歌姫シーラ・ジョーダンのために作った作品だが、最初に日本語と英語とをごちゃ混ぜにした適当な歌詞を載せたメロディーを作った。それを歌詞のない曲としてジャズ界のレジェンド、ジョン・ヘンドリックスに聴いてもらい、曲の世界観だけを説明した。
すると、ジョンが書いた英詞に僕の歌詞と同じフレーズがあったのだ。ミラクル!この出来事以降、僕は曲は必ず歌詞と一緒に作ることにしている。
ジャズの大リーガー養成機器を自分に無理やりあてがっても、僕らしいジャズは作れない。逆に、一番自分が得意なやり方にジャズを近づけていくことに気が付いたのだ。
今は憧れのジャズの中に、自分が自分らしくいられると感じるようになった。新作『Hmmm』はトリオのインストゥルメンタル・アルバムで、ドラムのアリとベースのマットの描く色が、僕のひそかな詞の世界観を鮮やかに彩ってくれている。
<本誌2020年6月23日号掲載>