220719p22_CAL_02.jpg
2018年の国際会議で韓国の文在寅大統領(当時、左)と同席したが...... FRANCOIS LENOIRーREUTERS

もちろん、安倍の政治が全て成功だったわけではない。人種差別的なナショナリズムの歴史とは一線を画しながら愛国心と活力と自立を取り戻すことも可能だったはずなのに、安倍はそのことを理解できなかった。あるいは、理解しようとしなかった。

戦争犯罪者たちを暗黙に、あるいは明示的にたたえることなく、靖国神社に祀(まつ)られた人々に敬意を表することはできたはずだ。

この両者の区別をはっきりさせて行動していれば、日本は未来に向けて進むことができ、国際的な非難を浴びずに済んだだろう。しかし、安倍は自身の支持層である極右ナショナリスト勢力と決別しようとはしなかった。

韓国政策も失敗だったと言わざるを得ない。安倍は野党政治家だった2010年、韓国併合に関して日本の責任を認めた菅直人首相(当時)を激しく批判したことがあった。

しかし、日本が韓国を併合したことは事実であり、安倍は韓国でくすぶり続けている怒りを(それに同意しなくても)認識すべきだった。

確かに戦後80年近くたつのに、韓国はいささか被害者として振る舞いすぎる傾向がある。しかし、日本はこの何十年もの間、自国が過去に韓国で行った行為について責任を認める努力を怠ってきた。そうした態度は、韓国やほかの国々(アメリカも含まれる)の怒りを買っている。

安倍は日本の国益を優先させるべく、自身のナショナリズムを乗り越えて行動することができなかったように見える。この点は戦略上のミスと言うほかない。中国が台頭するなか、日本は戦略的同盟国として韓国を必要としているからだ。

しかし、業績全体を見れば、こうしたことは比較的小さな問題にすぎない。安倍は日本のリーダーとして、歴史上類のない大きな成果を残した。

安倍晋三は、日本の未来を形づくるために積極的に行動し、その取り組みの多くで成功を収めた政治指導者だった。

ニューズウィーク日本版 台湾有事の新シナリオ
2026年4月21号(4月14日発売)は「台湾有事の新シナリオ」特集。

米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由

※バックナンバーが読み放題となる 定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます