だが、エネルギーが直接の制裁対象になっていなくても、ウクライナ侵攻によって欧州と世界は化石燃料、特にロシア産化石燃料からの脱却を加速させている。
EUはロシア産石炭の輸入を停止。22年末までにロシア産ガスへの依存度を3分の2に、30年までにロシア産石油製品への依存度をゼロに引き下げることを決定した。
欧米の対ロ制裁は1941年7月26日、旧日本軍の仏領インドシナ進駐直後にアメリカが行った対日石油禁輸の制裁を思い起こさせる。
この制裁は日本を止めることはできなかったが、その後の戦争で日本は敗北し、太平洋地域の戦後秩序が生まれた。2月24日のウクライナ侵攻と欧米の制裁は、長期的に見てロシアに壊滅的打撃を与えることになりそうだ。
ロシアはGDPと国の豊かさ、国境を超えた影響力において、ますます欧米に後れを取ることになる。この制裁はグローバル化を軸とした冷戦後の世界秩序が終焉を迎え、2つの極に再び分裂する時代の到来を告げるものでもある。
1つはグローバル化した自由市場と自由な民主主義の欧米諸国。もう1つは国家の私物化と国家資本主義・全体主義のロシアと少数の同盟国や属国(ベラルーシ、北朝鮮、シリアなど)だ。
さらに中国、インド、多くの旧非同盟諸国から成る第3極がそこに加わる。欧米の規範的な国際経済・政治秩序から物質的利益を得ようとする一方で、そこに付随する制約や義務は受け入れない国々だ。
この第3極の国々が1945~89年の非同盟運動と決定的に違うのは、まず中国とインドがアメリカの競合相手として台頭してきたこと。そしてアメリカ、EU、ロシアと経済的・政治的に対抗できる地域大国(トルコ、ブラジル、イランなど)が複数存在すること。
特に中国は経済と政治に加え、軍事力も世界屈指のレベルだ。

米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由