バイデン政権に交代したからといって、こうしたマイノリティー、アメリカ社会の辺境にいる彼らの希望がすぐに実現するとは、彼らも楽観してはいない。イルハン・オマルは、バイデンの勝利が確実になると、イスラエルとの和平を結んだUAEへのトランプ政権の武器輸出決定を見直し、イランと湾岸アラブ諸国の対立については中立を保つように求め、より踏み込んだ対中東政策の転換をバイデン政権に求めている。ラシーダ・ターリブは、上述の親イスラエル派のブリンケンが国務長官に任命されるとの発表を受けて、即座にこれを批判し、彼女の進めるBDS(イスラエル・ボイコット)運動がトランプ政権のような形で抑圧されないように、釘を刺した。

パレスチナ人作家のナダー・エリアは、バイデンのことを、「結局のところ白人の年寄りの親イスラエル派」である点でトランプと同じだが、「より害の少ないほう」と表現した。バイデンに「誰が彼を支えたか」の認識があれば、本来ならばバーニー・サンダースに行く予定だった票がバイデンの当選を支えたのだという認識があれば、トランプ政権の轍を踏むことはないのでは、とエリアは指摘する。

「ムスリムで移民で女性」(さらに「若い」を加えてもよい)という、何重にも辺境に置かれてきた人々が、アメリカの政治の中心舞台に立つには、まだ何十年もかかるに違いない。だが、12年前のバラク・オバマや今年のカマラ・ハリスの登場は、こうした辺境の人たちに、「それは不可能なことではない」というメッセージを、確実に伝えている。

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