中国とロシアがバイデンを祝いたくない理由

2020年11月16日(月)19時10分
ジョン・デニ(米陸軍大学校戦略研究所研究教授)

バイデンが国家安全保障戦略の柱を引き続き大国間競争に置くとすれば(そう考える理由は十分にある)、より多国間的なアプローチを押し進めようとする可能性が高い。経済政策では特にそうで、バイデンはアメリカと同盟諸国すべての発展を追求するという謳い文句の下、ヨーロッパやアジアとの大きな貿易摩擦問題を早期に解決しようとする可能性がある。

続いて、同盟国間の既存の貿易・投資協定を拡大し育てていくことに力を入れるかも知れない。TPPへの加盟もあるかも知れない。上院は自由貿易主義の共和党が多数を占めており、その支持を取り付けるのはそれほど難しくないかも知れない。

2021年の課題としては、自由主義諸国の経済の強化・活性化のために、中国から西側への投資に厳しく監視すること、ロシア産の化石燃料への依存度を下げるために協力することが挙げられる。新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退を克服するためにも、多国間主義での取り組みは助けになるはずだ。

中露にとって望まない未来が待っている?

防衛や安全保障の分野でも、アメリカが今後は多国間主義で取り組むことを、中露は覚悟すべきだろう。ヨーロッパではまず、NATOの集団的自衛権行使に関与する姿勢を改めて示したり、ドイツ駐留米軍の削減という近視眼的な計画を破棄したり、ロシアの西側に対するハイブリッド戦争への対抗措置の強化などが行われるだろう。

またアジアでは、アメリカは日本やオーストラリア、インドと足並みをそろえて中国の「近隣諸国いじめ」に対抗するだろう。そのためには、韓国と日本の関係改善にも力を尽くすことになる。

防衛や安全保障、経済の政策分野において、多国間主義の取り組み強化は同盟国やパートナーとの関係強化につながり、アメリカの比較優位を高めることになる。ロシアや中国には同盟の相手がいないから、分断をあおったり、団結を邪魔したり、西側コミュニティからメンバーを奪ったりしようとするのだ。

大国間の競争においても多国間主義的な取り組みを進めれば、戦いの条件は同じになる。ロシアにとっても中国にとっても、これは見たくない光景だ。

今、あなたにオススメ

今、あなたにオススメ