香港高裁と北京政府が激突

2019年11月21日(木)13時40分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

香港高裁が「覆面禁止令」は香港基本法に違反するという判決を出した。それに対して全人代常務委員会は基本法の解釈権は全人代常務委員会のみにあるとして香港の司法を激しく批判。対立構造の原点を解剖する。

「覆面禁止令」とは

このコラムを読んでくださる方の中には、ご存じない方はおられないとは思うが、念のため、「覆面禁止令」とは何かをざっとおさらいしておきたい。

今年10月4日、香港の林鄭月娥(りんていげつが)行政長官は「緊急状況規則条例」(緊急条例)を発動し、デモ参加者のマスクなどの着用を禁止した。顔を何らかの形で覆い、見えなくすることを禁止する緊急立法を発布したのである。

緊急条例はまだイギリス統治時代の1922年に制定されたもので、1967年5月6日から同年12月まで香港で闘われれた「67暴動」の時に発動されて以来、約半世紀ぶりに発動された。「67暴動」は文化大革命の流れの中で、中共側が反英運動として起こしたものである。林鄭月娥は記者会見で「覆面禁止令」の目的は「暴力行為をやめさせるためだ」と述べている。

香港高裁「覆面禁止令違憲」判決に中国猛反発

香港の高等法院(高裁に相当)は18日、「覆面禁止令」が香港基本法に違反しているとの判決を下した。これに対して中国政府が猛烈に反対している。

中央テレビ局CCTVは、例によって噛みつくような勢いで、香港の司法には香港基本法に対する解釈権はなく、全人代(全国人民代表大会)常務委員会にのみ、その権限があると繰り返したが、11月19日付の中国共産党機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」もまた「全人代:香港高裁の判決は基本法と全人代関連規則に合致しない」というタイトルで香港高裁を糾弾している。

それによれば、11月19日付の新華社電は、全人代常務委員会法制工作委員会の報道官が香港高裁の判決に関して以下のように語ったという。

●11月18日に香港高裁が出した一連の判決の中に、「緊急条例(覆面禁止令)」が香港基本法に符合しないという判決があるが、これは完全に無効である。(中華人民共和国)憲法と基本法は共同で特別行政区の憲法制度を構成している。香港特別行政区の法律が香港基本法に合致するか否かを判断する権限を持っているのは全人代常務委員会にのみあり、当該委員会のみが基本法の解釈権を持っている。

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