日本の半導体はなぜ沈んでしまったのか?

2018年12月25日(火)10時19分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

日本の半導体関係の技術者がリストラをひかえて窓際に追いやられていた頃、技術者の一部は「土日ソウル通い」をしていたのである。

そのころ筆者は留学生の相談業務に従事しており、リストラなどで困っている日本人に対しても無料奉仕で手助けをしてあげていたことから、「とんでもない事実」を知るに至った。実際に筆者に相談をしにきた人物が吐露した事実を記そう。相談業務には守秘義務があるため書くことは出来ないが、これは全くの番外編で、ただ単に親切心から相談に乗ってあげただけなので、今となっては事実を書くこともそろそろ許されるだろう。

その人は元東芝の社員で、非常に高度な半導体技術の持ち主だった。しかし半導体部門が次々に閉鎖され、上級技術者もリストラの対象となって、すでに「もしもし」と声がかかるようになっていた。解雇は時間の問題だった。そういった人たちのリストを韓国は手にしていた。そこで水面下でこっそりと近づき、甘い誘いを始めたのだ。

金曜日の夜になると東京からソウルに飛び、土曜と日曜日の2日間をかけて、たっぷりとその半導体技術者が持っている技術をサムスン電子に授ける。日曜日の最終フライトで東京に戻り、月曜日の朝には何食わぬ顔をして出社する。

土日の2日間だけで、東芝における月収分相当の謝礼を現金で支給してくれた。領収書なしだ。

「行かないはずがないだろう」と、その人は言った。

「長いこと、東芝には滅私奉公をしてきました。終身雇用制が崩れるなどということは想像もしていなかった。だというのに、この私を解雇しようとしているのです。それに対して韓国では、自分が培ってきた技術を評価してくれるだけでも自尊心が保たれ、心を支えることができる。おまけに1ヵ月に4倍ほどの給料が入るのですよ。行かないはずがないでしょう!」

それに「土日のソウル通いは、私一人ではない。何人も、いや、おそらく何十人もいるんですよ!」と、自分の罪の重さを軽減させるかのように顔を歪めた。

彼の吐露によれば、それは「韓国政府がらみ」で、サムスン電子単独の行動ではないというのである。

恐ろしいのは、その次のステップだ。

「彼らはですね。私たち技術者を競わせて、そのときどきに最も必要な技術者を引っ張ってくる。半導体も、どのようなハイテク製品を製造するかによって内容が変わってきます。私ら、やや古株から吸い取れる技術を吸い取り終わると、なんと突然"解雇"されるわけですよ。もっとも、闇雇用ですから、"解雇"という言葉は適切ではないんですがね......。要は、"用無し"になったわけです」

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