イランがホルムズ海峡を封鎖したらどうなるか──原油高騰と戦争だ

2018年8月10日(金)21時40分
トム・オコーナー

米中央軍のジョセフ・ボーテル司令官は8月8日に国防省で記者団に対し、イランの軍事演習について次のように語った。「アメリカへのメッセージは明確だ。制裁再開を前に、(海峡封鎖を)実行する能力を誇示する狙いがあった」。イランは約100隻の艦船を演習に集結させていたが、従来のように嫌がらせをすることはなかった。

「イランがある程度の戦力を持っているのは間違いない。機雷や沿岸防衛用のミサイル、赤外線レーダーなどだ。だがアメリカも相当の戦力を持っている」、と彼は言った。アメリカは(ホルムズ海峡の)航行の自由を守るために友好国と協力し、イランに対して必要に応じた対抗措置を取る、と強調した。

イランはアメリカに打ちのめされる可能性に加え、国内でも不安要素を抱えている。イランが中東で影響力を拡大できたのは、イラクやシリアのシーア派を支援してスンニ派反政府勢力を抑え込んだことと、国産の弾道ミサイルを保有していることだ。だが、それらに巨額の資金を注ぎ込んだせいで、イラン経済は大打撃を受けた。さらに核合意からの離脱、というトランプ政権の決定を受けてイランの通貨リアルは暴落し、イランの各都市で大規模デモが続発する異常事態に発展した。

イランとアメリカ、どちらが信用なくすか

ホルムズ海峡を封鎖すれば、イランの国際的な信用にも傷つく。今は味方の中国やイラク、インドも、原油輸入を依存するホルムズ海峡を封鎖すれば、イランに背を向けるかもしれない。核合意から離脱したアメリカが国際社会で孤立している滅多にない好機に、自らまた世界を敵に回すことはしたくないだろう。

ほかの締結国である中国、フランス、ドイツ、ロシア、イギリスの5カ国は、核合意の破棄を訴えるトランプの主張を断固拒否している。トランプは、核合意はイランのシーア派支援を阻止することも、イランの核開発を永遠に終わらせることもできない代物だ、と批判してきた。対するEUは8月7日、域内の企業がアメリカの制裁に従うことを禁じる「ブロッキング規制」を発動し、イラン撤退の動きに歯止めをかけようとしている。

結果的にイランは強気の姿勢を崩しておらず、ジャバド・ザリフ外相は8月8日、国営イラン・イスラム共和国放送で「もう誰もアメリカを信じない」と発言。さらに、ロウハニが7月22日、アメリカのせいで原油の輸出が不可能になれば、ホルムズ海峡の封鎖も辞さないと示唆したのは「心理戦を仕掛けてきたアメリカへの警告だった」と言った。

(翻訳:河原里香)

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