世界で導入が進む「週休3日制」 コロナ禍が後押しするサステイナブルな労働

2021年8月15日(日)18時10分

旅行からハイテクまでさまざまな業界で週休3日制を導入する企業が世界的に増えている。新型コロナウイルスのパンデミックで労働者の働き方が変わる中で、企業が人手確保のために採用を進めているためだ。

労働時間を減らすと生産性が上がるという「北欧モデル」を巡る議論は以前からあるが、コロナ禍では企業ばかりか公的部門や政治家からも支持が高まった。

人材派遣大手アデコのクリストフ・カトワール社長によると、小売業や接待業などの企業は、経済がコロナ禍から回復して人材の確保やつなぎ止めに苦慮しており、多くが週当たりの労働時間を短くしている。

「(コロナ)危機を経て、人々は自分たちの労働条件が必ずしも最良ではなかったことに気付き始めている。今では私的な生活を犠牲にしたくないと考えるようになった」と言う。

コロナ禍が引き起こした変化が定着するかどうかについては懐疑的な見方が広がっているが、スペインの通信大手テレフォニカは国内の従業員の最大10%を対象に週休3日制を試行している。

事情に詳しい関係者によると、参加者が多く、生産性が維持されれば、対象者は当初の1万5000人から拡大される可能性がある。

テレフォニカの試験的取り組みでは参加者の給与が15%削られるが、別の国では労働時間を短縮しつつ全額支払う企業もある。

自由な時間

今年導入された労働時間短縮制度の多くではコストが発生しないことが明らかになっている。しかしアイスランドの国営メディアRUVによると、同国政府は、特にヘルスケア部門の人員を増やすために、年間で3360万ドルの予算を計上した。

スペインのビジネススクール、ESADEのエコノミスト、カルロス・ヴィクトリア氏は「仕事の流れを見直して労働時間を短縮することが容易な分野もあれば、労働時間を減らすと生産が減る分野もある」と指摘。「少なくとも短期的には(週休3日制を)労働慣行の未来像だとするのは早計だ」と述べた。

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