最新記事
移民

移民支援で被災地予算が枯渇? FEMAが抱える資金不足の真相

2024年10月8日(火)13時10分
ダン・グッディング、アリス・ハイアム
被災地サウスカロライナ州を訪れて地元市長と抱擁するバイデン(10月2日) EVELYN HOCKSTEINーREUTERS

被災地サウスカロライナ州を訪れて地元市長と抱擁するバイデン(10月2日) EVELYN HOCKSTEINーREUTERS

<移民支援に6億ドル以上が投入されている一方で、被災地への資金が不足している現状に共和党が強く反発している>

米南部と東部を襲った超大型ハリケーン「へリーン」による被害が拡大している。10月3日の時点で死者の数は200人を突破した。

そうしたなかでマヨルカス国土安全保障長官がショッキングな発言をした。自然災害などの大災害への対応を担う政府機関である連邦緊急事態管理庁(FEMA)が資金不足に陥りかねない、というのだ(FEMAは国土安全保障省の一部局)。


マヨルカスは2日、「当座の被災地のニーズを賄うだけの資金はある」としつつも、今シーズンにもう1つ巨大ハリケーンが襲来すれば資金面で乗り切れないと述べた。

この資金不足に関連して共和党がやり玉に挙げるのは、FEMAが少なくとも6億4000万ドルの資金を、移民の流入への対応を迫られている地域を支援するために拠出していることだ。

「問題を解決するのは簡単だ」と、テキサス州のアボット知事(共和党)はX(旧ツイッター)に投稿した。「マヨルカスとFEMAは、不法移民を定住させるために金を使うのを直ちにやめて、その金をハリケーンの被災地に振り向けよ。アメリカ人を最優先にすべきだ」

6億4000万ドルの資金拠出は、「シェルター・アンド・サービシズ・プログラム(SSP)」と呼ばれる取り組みに基づくものだ。FEMAのウェブサイトによると、このプログラムは、「非米国市民の移民を短期収容施設から安全に、整然と、人道的に退去させること」を目的としている。その資金は、食料、住居、輸送、緊急の医療、衣料品、通訳・翻訳など、さまざまな用途で用いることができる。

しかし、SSPの予算は、FEMAの年間予算に比べるとわずかな金額だ。2025会計年度(10月1日~)にFEMAが計上した予算は331億ドルに上る。しかも、SSPは税関・国境取締局(CBP)から受け取った予算をFEMAが分配しているにすぎず、同プログラムの予算は災害被災地の支援予算とははっきりと区別されている。

「(共和党などの)批判は全く事実無根だ」と、国土安全保障省の広報担当者は3日、本誌に語っている。「SSPは(被災地支援とは)全く別個のプログラムとして議会の承認を得て実施している。FEMAの災害関連の機能や予算とは関係ない」

問題は、「へリーン」が襲来したのがちょうど会計年度の境目の時期だったこと。新しい年度の予算は、いま議会で審議されている最中だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権

ワールド

米空港で最大20%減便も、続く政府閉鎖に運輸長官が

ワールド

アングル:マムダニ氏、ニューヨーク市民の心をつかん

ワールド

北朝鮮が「さらなる攻撃的行動」警告、米韓安保協議受
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中