アステイオン

連載企画

素朴な疑問...理系は「研究の喜び」を分かち合えるが、文系研究者はどのように処理している?

2023年07月12日(水)10時42分
後藤彩子(甲南大学理工学部准教授)

DSC00332-20230705.jpg

甲南大学の講義室にて 撮影:宮野公樹


私の研究分野では、どれだけ知識があろうとも、手先が器用でなければ研究をうまく進めることが難しい。私の場合は自分が器用であるという認識はまったくなかったが、周りの人に言わせれば器用であり、それがたまたま研究テーマを進める上で適していたということになる。

内容が魅力的だと思ってはじめたテーマでも、もしかしたら、研究者は無意識に自身の元来備わっている能力を活かせるテーマを選んでいるのかもしれない。

実験系の理系の研究室ではその組織体制上、研究室内で情報共有することにより、研究成果を外に出す前の段階から身近な人間を説得することが可能である。一方、文系は静寂の中、自らと向き合って思考を深めることができる。

今回の企画で、文系の分野に触れることはできたが、一般性あるいは特殊性を見出すためには3研究者分では、データとして足りない。もう少し他のケースにも触れたいと思えたこの段階で、学問との再契約の初期段階としては成功したと言えるのではないかと感じた。


後藤彩子(Ayako Gotoh)
東京都立大学理学部生物学科卒業。東京大学理学系研究科生物科学専攻修了。愛媛大学大学院連合農学研究科博士課程修了。博士(農学)。自然科学研究機構基礎生物学研究所特別協力研究員、同生理学研究所専門研究職員、日本学術振興会特別研究員(琉球大学)、甲南大学講師を経て、2019年から現職。アリの生態を探る研究をしている。サントリー生命科学財団「サントリーSunRiSE」採択者。研究室HPはこちら

『アステイオン』98号に連載企画「超えるのではなく辿る、二つの文化」の第3回「納得の文系に説得の理系」が掲載されています。


asteion98-150.png

 『アステイオン』98号

  特集「中華の深化、中華の拡散」──「中国の夢」の歴史的展望」
  公益財団法人サントリー文化財団・アステイオン編集委員会[編]
  CCCメディアハウス[刊]


 (※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)
 

PAGE TOP