物乞い禁止で見えた「幸せな国」のほころび

2014年11月20日(木)14時56分
アリソン・ジャクソン

 世界屈指の裕福な国にして、幸せな国。経済は好調で、美しい自然環境に恵まれている。

 そんな北欧の楽園ノルウェーが、社会の弱者である貧しい人々に冷徹な顔を見せている。ノルウェー議会はこの夏、自治体が物乞いを禁止できる法案を可決。来夏からは全国的に禁止される見通しだ。

 南部の都市アーレンダールは、いち早く禁止令を制定した。地元の政治家は、物乞いは犯罪と関連していると主張する。

 歓迎されざる人々は、物乞いだけではない。路上生活者の緊急収容施設の予算が削減され、首都オスロでは公園や路上など屋外の公共の場所で寝ることが禁止された。こうした動きに対し、近年、急増している少数民族ロマを標的にしたものだという批判もある。

 ノルウェーのような国が、貧しい人々にこれほど強硬な態度に出るのは衝撃的でさえある。国民1人当たりのGDPは10万ドルを超え、アメリカの2倍近い。失業率は3.7%とヨーロッパでもとりわけ低い。仕事がなくても、貧しい人に差し出すいくばくかのカネはあるだろう。自分たちが貧しい国だった時代を、忘れてしまったのだろうか。

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