最新記事

中国

イギリスのCPTPP加盟申請は中国に痛手か?

2021年2月15日(月)11時41分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

気炎を上げるジョンソン首相(2月10日) Jessica Taylor-REUTERS

イギリスが正式にCPTPPへの加盟申請をしたことを、中国では「脱欧入亜」と皮肉っている。イギリスが先に加盟することによって中国の加盟を阻止することができるのだろうか? 中国の受け止めを中心に考察する。

一羽の鶏がアジア太平洋に地殻変動をもたらすのか?

2月1日、イギリスはCPTPP(=TPP11)(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)加盟に正式に申請をした。

なぜ近くのEUから離脱し、遠くのアジア太平洋地域に入っていくのか。中国ではイギリスのこの行動を「脱欧入亜」と皮肉っている。かつて日本をはじめ多くの発展途上国が「脱亜入欧」を掲げて近代国家建設を目指したのをもじったものだ。

それにしてもイギリスは本当は「脱欧入米」をしたかったのではないのかと、中国のネットでは冷ややかだ。ネットでは、英米自由貿易協定を結べなかったイギリスを憐れむ形で「脱欧入亜」と「脱欧入米」という言葉を並べて論評している。中国語では「米国」は「美国」と書くので、中国のネットで交わされているフレーズは正確には「脱欧入美」である。

この理由がまた、やや嘲笑気味に書かれているのでご紹介しておこう。

すなわち、ブレグジッドに躍起になったイギリスのジョンソン首相は、最初はアメリカと手を結ぼうと、当時のトランプ大統領に近づいてみたのだが、結局のところ「鶏肉」などの問題でトランプの譲歩を得ることができず決裂したとのこと。その「鶏肉」、実は「ネズミの毛やウジ虫が混入していても、塩素消毒さえすれば大丈夫」というレベルのアメリカの食品安全基準に、イギリスの紳士淑女たちが我慢できなかったという説明が付いている。

中にはこのような映像や、このような環球時報の報道あるいは人民日報海外網の報道もある。いずれも主人公は「鶏」だ。

もしアメリカと自由貿易協定を結べば、常にアメリカからの脅しに反応しなければならない。さまざまな譲歩を迫られる。だから誇り高き「元大英帝国」は、かつての植民地とイギリス連邦(コモンウェルス)が点在するインド太平洋や東南アジアに「威風堂々」と戻ろうとしていると、やや冷やかし気味だ。

残っているイギリス領の島嶼はインド洋にある「チャゴス島」なのだが、この小さな小さな無人島を、中国のテレビでは拡大して見せた。だからイギリスには「アジア太平洋」に戻って行く資格があると、イギリスのために「面白おかしく」弁解してあげている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、3会合連続で金利据え置き 今後の道筋示さず

ビジネス

米メタ、250億ドルの社債発行へ 最長40年債も=

ビジネス

エヌビディアCEO、サムスン・現代自会長と会談 A

ワールド

イスラエル軍、ガザで新たな攻撃 ハマスは人質2遺体
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 9
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 10
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中