最新記事

日本社会

「給与より生活の質」求める日本人 企業は多様な手法で人材確保へ

2018年8月13日(月)18時52分

売り手市場が続く雇用情勢。都内の就職フェアで2017年11月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

都内の外食産業に勤務している原田美咲さん(24)はアパレルメーカーへの転職を考えている。動機は、給与面の待遇だけではない。「お金か、フレックスタイムか、と聞かれたら、フレックスタイム」と話す彼女が求めるのは、生活の質の改善だ。労働者の求めるものが変わりつつある中、深刻な人手不足も相まって、採用する側の企業も変革を迫られている。

厚生労働省によると、今年6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.62倍と、44年4カ月ぶりに1.6倍台となった前月をさらに上回った。

総務省が集計している労働力調査では、同月の完全失業率は2.4%と4カ月ぶりに悪化したものの、その水準は依然として低く、企業の人手不足感は色濃い。

こうした中、柔軟な勤務形態や企業内の託児所、それに家賃補助などの福利厚生は、働き手にとって、賃金とともに重要な条件とみなされている。欧米諸国では一般的な「特典」も、日本では広がり始めたばかり。日本は最近まで、職の安定や緩やかな昇給と引き換えに、雇用主に忠誠を誓う文化が根強く残っていた。

企業にも変化が訪れ始めた。トヨタ自動車は4月、愛知県豊田市の本社工場近くに事業所内託児所を開業。

人材獲得の競合を避けるため、首都圏からあえて離れた場所にオフィスを開設した例もある。ジェイテクトIT開発センター秋田の今井深見代表取締役は、秋田県に拠点を設けた理由について「ソフトウェア開発人材を採用する上で、同業他社が少なく有利」と説明する。

一方、同じく自動車部品のサプライヤーであるデンソーは逆の手法を取る。同社は今年4月、東京都港区に自動運転などの研究開発を行うための拠点を設けた。本社のある愛知県よりも、東京の方が専門性の高い技術者が集まりやすいと判断した。

適応を迫られる企業

国立社会保障・人口問題研究所は、2015年に1億2709万人だった日本の人口が50年後の2065年に8808万人に減少すると推計。このうち生産年齢人口は4529万人と、3000万人余りの大幅減になると予想されている。

一部の企業では、すでに人手不足の影響が出始めている。東洋紡は、フラットパネルディスプレイに使用するフィルムを増産する必要があるとしているが、生産ラインを十分確保できていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局

ワールド

ポーランドの2つの空港が一時閉鎖、ロシアのウクライ

ワールド

タイとカンボジアが停戦に合意=カンボジア国防省

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中