コラム

大人気の台湾旅行、日本人が知らない残念な話

2017年01月31日(火)12時08分

RichieChan-iStock.

<年始に台湾旅行に行った。アジアの情緒があるからと日本人は受け入れているようだが、環境意識は低く、有名レストランですら清潔とは言いがたく、サービスも日本と比べて......> (観光地の九份は上のアングルの写真で有名。確かに美しい街並みだったが、一体どこに行けばこのような写真を撮れるのか、私にはわからなかった)

 こんにちは、新宿案内人の李小牧です。今回は台湾について取り上げたい。

 今年の年始に妻と息子と3人で台湾旅行に行った。私にとっては2回目の訪問だが、前回は2008年の総統選取材だったため、観光はまったくしていない。今回は家族とともにたっぷり観光を楽しんだ。

 しかも今回は、若者のようなケチケチ旅行にチャレンジしてみた。飛行機はLCC、ホテルも格安だ。2泊4日の旅行(帰りは機中泊)で総費用は10万円程度。この金額で家族3人が正月休みを堪能できるのだからともかく安い。

 桃園国際空港に到着後、まず向かったのは九份。映画『千と千尋の神隠し』のモデルになったのではとも噂される、美しい街並みの観光地だ。その後は台北市に行き、故宮博物院やら中正記念堂、鼎泰豊(小籠包で有名なレストラン)など、台湾初心者なら必ず行くコースを回ってみた。

 ビジネスや視察、取材で各地を飛び回っている私にとって、普通の観光旅行は逆に新鮮だった(笑)。

 とはいうものの、ついついジャーナリスト魂がもたげてしまい、あれこれ観察してしまう。まず気になったのが中国人観光客の少なさだ。昨年5月の蔡英文総統就任以来、中国からの旅行ツアーは減少傾向にある。おかげでどの観光地も人が少なく快適に観光できた。

 2014年に東京・上野の東京国立博物館で特別展「台北 國立故宮博物院-神品至宝-」が開催されたが、私はあの時、国宝と呼ばれる翠玉白菜(虫がとまった白菜の形に彫刻されたヒスイの芸術品)を見るために半日も行列に並んだ。それが今回、故宮博物院ではたった5分の待ち時間で見られたのだ。

 費用が安くて、すいている。しかもインフラの充実ぶりやマナーでも先進国とさほど変わらず気軽に旅行できる。なるほど、日本で台湾旅行人気が高まるのも納得だ。

 実際、台湾が大好きなのは日本人だけではない。中国のネットを見ると「台湾はすばらしい。民主主義を実現しているではないか。中国人だって民主主義の担い手になれるのだ」「台湾のマナーは先進国に負けていない。民度を決めるのは民族性ではない。教育なのだ」などなど、台湾を絶賛する言葉が少なくない。

 勘のいい人ならばお気づきだろうが、これらの褒め言葉は中国共産党に対する痛烈な批判となっている。中国流のあてこすりだ。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 9
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story