<ハイチのドキュメンタリーを発端に世界的に知られるようになった写真家マギー・スティーバー。インスタグラムで発表するその最新作は、意外にも「架空の世界の出来事」だった>
すでにこのブログで触れたが、情熱は写真家にとってもっとも大切な要素の1つである。それがなければ進化しない。それを持ち続けることは、偉大なる才能の1つにさえなる。今回紹介するマギー・スティーバーはそんな情熱を持つ写真家だ。80年代後半から、ハイチのドキュメンタリーを発端に世界的に知られるようになった大ベテランである。近年はフォトエディター、フォトコンサルタント、教育者としても名を馳せるようになってきている。
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今回、スティーバーの作品として焦点を当てるのは、"The Secret Garden of Lily LaPalma"(リリー・ラパルマの秘密のガーデン)という最新作。継続中のプロジェクトだ。彼女が今までの写真家人生の大半を費やしたドキュメンタリーではない。その要素も入ってはいるが、フィルム・ノワールや犯罪ミステリーの流れを取り入れた架空の世界の出来事だ。自らを刷新するために、さらに自らの写真を進化・成長させるために始めたという。だから、人にどう思われるかはまったく気にしていない、と。
愛、生と死、闇と光などのテーマが混り合っている。極めて重要なのは、そうした大半の要素は、スティーバー自身が経験してきた、あるいは自ら感じている精神的なものの反映になっているという点だ。幾十にも変化する主人公リリー・ラパルマはマギーの分身そのものであるという。
私が彼女と初めて会ったのは、1993年のポルトープランスだった。街のあちこちに血の匂いが漂っていたハイチ危機(編集部注:1991年に軍事クーデターが発生、内乱状態となり、国連の多国籍軍展開を経て1994年に軍政が終了した)のときだ。スティーバー自身も凄まじい恐怖を味わい、アメリカの諜報部員により生死の境で救出された経験までしていたはずなのに、笑顔を保ち続けていた。可能な限り、軍政で抑圧された人々に自らを溶け込ませ、取材中に知り合ったストリートチルドレンを身銭を切って学校に行かせようとした。