<メキシコのナヤリット州で生まれ育ったセサル・ロドリゲスは、過酷な環境のなか、タバコ農場で長時間低賃金の労働を強いられている先住民族ウィチョル族の問題を写真で世に問う>
社会問題や人道的な問題は、写真家にとって大きなテーマのひとつだ。メキシコのナヤリット州に生まれ育ち現在も住み続けるセサル・ロドリゲスも、そうした問題をテーマとする写真家である。
彼が長年追い続けているのは、メキシコの主要なタバコ産地として有名な同州でタバコの栽培に従事する先住民族ウィチョル族たちだ。
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彼らは乾季が終われば、シエラマドレ山脈から沿岸部に降りてきて農場で働く。長時間、低賃金の過酷な労働だ。1日18時間働いて稼げるのは11ドルほど。食べ物もまともに買うことができない。タバコ・シーズン中は、まともな住み家などなく、上水道やシャワーも存在しない。それは悲しくも、農場の殺虫剤や肥料の薬品に身体をコンスタントに接触し続けることを意味する。近くのサンチェゴ川と通じている運河は彼らの主要飲料水であり、身体と服を洗う場所でもあるが、その川自体、メキシコで最も汚染された場所のひとつになっている。
また、ウィチョル族の大半はシーズン中、家族全員で農場に暮らすため、子供や妊婦も同じ環境に曝される。いや、貧しい彼らにとって、子供たちも重要な労働力だ。そうして、彼らの多くは病気や栄養不良になってしまうが、近くには医者もいない。
このウィチョル族タバコ労働者たちの問題をプロジェクトとして取り上げたのは、同じメキシコ人としての責任からだとロドリゲスは言う。とりわけ、同じ州で生まれ育った者としての責任だ。彼の写真歴は実質まだ4年ほどだが、写真で食べていけるかどうかの恐怖を追い払って写真家になる決意を固めたのは、この問題がきっかけだった。大きな問題にもかかわらず、ウィチョル族タバコ労働者たちの人道問題は、今までヴィジュアル・メディアでほとんど取り上げられてこなかったからだ。