スターマーは党の路線を中道寄りに押し戻し、左派からいくぶん怒りを買ったが著しい不和は生じなかった。彼は労働党の評判をおとしめていた党内の反ユダヤ主義に対して、断固とした措置を取った。

だから彼はパッとしないまでも堅実な仕事をしてきた。そしてじっと待った。今となっては天才的なやり方に思える。長年権力を握り続ける党に、とりわけ彼らがルールに対して「特権でもあるかのように尊大な」態度を取っているように見える場合(ジョンソンの誤りがまさにこれだ)、有権者はうんざりするものだ。コア支持層の希望にあまりに寄り添いすぎて一般的な国民の求めるものを見失えば、政府は支持を失う。

(高所得者に課される)45%の所得税率を撤廃するとのリズ・トラス首相の案もこれに相当する(その後、案を撤回)。まさに財源が必要とされているこの時に、この政策が人々からは「億万長者をさらに富ませる」ものだと捉えられたからだ。

スターマーが政権を取ったあかつきには撤廃するとしている「金持ちへの贈り物」的なこの減税措置を一掃すると公約を掲げたのが、スターマーにとってはたやすい目標だった。次の総選挙までにはまだ時間があり、多くの出来事が起こり得るだろうが、現状では「労働党党首で首相としてのキア・スターマー」という言葉はイギリスの人々には退屈に聞こえ、それでも同時にまあ許容範囲かな、というふうにも聞こえる。

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