ワクチン懐疑派の存在は、とても残念だ。イギリスのワクチン接種は客観的に見て、他の大国の先を行く科学と物流の偉業だったのだから。

最近放映されたチャンネル4のドキュメンタリーによれば、それが可能だったのは、専門知識、公的資金による入念で大胆な計画、政治的支援、そしてわずかな幸運が組み合わさったためだ。

ただし想定外の障害として、昨年夏のロックダウン(都市封鎖)の効果があり過ぎてウイルス感染の機会が減り、ワクチンの臨床試験の結果を判断しにくくなった。

このドキュメンタリーでは、試験段階にあるワクチンを進んで接種した数万人の市民の重要性が明らかになった。標準的な「二重盲検法」の試験なので、偽薬の接種を受けた人たちもいた。彼らはワクチンに守られることなく、ワクチンを接種された人よりもどれだけ感染しやすく、発症しやすいかを探るための実験台となったのだ。

ワクチン接種の朝、僕はこの記念すべき瞬間に何を感じたかを記憶しておこうと努めた。

僕が感じたのは驚嘆であり、誇りだった。僕自身が何かを成し遂げたからではない。あの小瓶が、科学界や政府、企業、医療従事者、ボランティアの類いまれな協力の結晶であるからだ。

そして、それを受ける僕たちも、時間きっかりに接種会場へ行き、マスクを着け、自分と社会をこの悪夢から解き放つために、役割を果たしていると思ったからだ。

(※イギリス、イスラエルというワクチン戦略の勝ち組に学べることは何か。ワクチンと免疫と副反応にはどんな関係があるか。あらゆるコロナウイルスに有効なユニバーサルワクチンとは何か。本誌6月8日号では、ワクチン先行国の知恵と戦略をリポート。本記事は同特集より)

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