ここに民主主義の優位点が見えるという主張もありそうだ。独裁者が権力を維持しつつ、現代のグローバル経済で競争力を保つには、緊張を抱え込まざるを得ない。

だが、民主主義も緊張を抱え込んでいる。特定の利益集団による政策決定の支配を防いだり、市場重視の成長政策と多数派政治がもたらす再分配志向とのバランスを取らなくてはならない。限定的な政府の力と個人の権利を基礎とする社会では、秩序の維持も容易ではない。自由主義諸国では緊張の管理に失敗した結果、深刻な政治的分断と社会不安が生じている。

いま中国共産党は、未知の領域に足を踏み入れている。中国研究者のオービル・シェルは「世界にとって極めて重要な実験が進行中の培養皿を、私たちは見つめている」と述べた。「一党独裁と、経済的にも技術的にも革新的な部門を結び付けるなどということが本当に可能なのか」

権威主義体制が権力を維持する手段を考えても、私たちは未踏の領域にいる。中国共産党はAIによる顔認識、携帯電話に仕込まれたスパイウエアによる国内外の反体制派追跡、さらにはウエアラブル技術やIoT(モノのインターネット)を通じた生体・感情データの活用など、前例のない統制手段を用いている。「デジタル権威主義」は、イノベーションを損なわずに強力な統制を行える可能性を持つ。

中国は「賢明な権威主義」に到達した?