さらにバイデンは、半導体への巨額の投資を含む「CHIPSおよび科学法」を昨夏、超党派で成立させたとアピール。製造業の復活のために必要な保護主義政策を打ち出した結果、既に80万件の製造業での雇用を「この法律の力を借りるまでもなく」生んだと繰り返し主張した。

「アメリカのサプライチェーンが必ずアメリカから始まるよう、私たちは尽力している」

この言葉に、議場は党派を超えて拍手を送った。バイデンは、連邦政府のインフラ事業に使用する建設資材を全て国産にする考えを示した。

一方で、一部の共和党議員はメディケア(高齢者医療保険制度)などの高齢者向け事業を削減しようとしているとバイデンは主張。共和党議員が「そんなことはない!」とヤジを飛ばすと、「おやおや、転向したようだね」とジョークで切り返す場面もあった。

演説直後に行われたCNNの世論調査は、国内での実績に的を絞って演説したバイデンの狙いどおりと思われる結果だった。

無党派層でバイデンの経済政策を支持すると答えた割合は、38%から64%に急上昇。バイデンは今後数週間以内に、大統領選への出馬を宣言するとみられる。

しかし共和党から指導者として不適任だと批判されているバイデンは、これからの2年間、国外ではタカ派を演じるしかないだろう。中国との協調路線を取るという期待に応じることもないはずだ。

気球問題が持ち上がった後、アントニー・ブリンケン米国務長官は、初の訪中予定を延期した。

「米中関係にとって、気球問題は年内は尾を引く。それはアメリカが中国への強硬姿勢を強めている表れでもある」と、シンガポールの南洋理工大学国際研究大学院のラファエロ・パンツッチ上級研究員は指摘する。

「コロナ禍を脱却して世の中が正常化するにつれて、中国がこれまで以上に野心的に国外に進出するようになり、米中間の競争は今年ますます激化する」

バイデン政権はこの2年間、中国に対しては同じ姿勢を取り続けてきた。関係が改善されることがあるとすれば、それは「中国の出方次第」という方針だ。

共和党は中国気球の撃墜を受けて、いったんはバイデンへの矛を収めた。だがトランプ政権時代に国連大使を務め、共和党の次期大統領候補の1人と目されるニッキー・ヘイリーがツイートしたように、「バイデンのせいで、アメリカが中国からいいようにあしらわれている」ような事態があれば、いつでも攻撃材料にしようと狙っている。

とはいえ一般教書演説が明示したのは、バイデンが出馬した場合、勝敗の決め手は内政だということだ。それは、彼自身がよく分かっている。

From Foreign Policy Magazine

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