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イギリスの高級不動産取引が租税回避や資金洗浄の主要な舞台に LEON NEAL/GETTY IMAGES

アゼルバイジャンの大統領一族絡みの金も定石どおりペーパーカンパニーを経由し、架空名義での不動産の購入に充てられた。その手続きは全てイギリスの法務のプロが手掛け、完全に合法的に行われた(パンドラ文書の最新の分析で、なんとエリザベス女王も知らずにその取引に関与していたことが分かった)。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の愛人とおぼしき人物が地中海地方で優雅に暮らしているのも、イギリスのペーパーカンパニーのおかげだ。プーチン政権に密接なコネを持つ面々(その中には制裁リスト入りし、欧米の金融機関の口座を凍結された人物も複数いる)がひそかに欧米で資金を転がしていることも明らかになった。

ヨルダンのアブドラ国王は透明性の高い行政組織に授与する賞を創設したことで知られるが、自身がアメリカとイギリスで何億ドルもの不動産投資をしていることはひた隠しにしていた。

カザフスタンのかつての独裁者ヌルスルタン・ナザルバエフも「非公式の第3夫人」の名義で欧米に資産を保有している。

英ブレア元首相の隠し資産

そのナザルバエフに演説の手ほどきをしたこともあるトニー・ブレア元英首相の隠し資産も暴露された。ブレアは腐敗とはさほど縁がなさそうだが、実は不正資金に絡んで甘い汁を吸おうとする欧米の政治家の指南役を務めてきた。

首相退任後のブレアは、影響力を利用して民主化や金融の透明性を訴えるのではなく、カザフスタンやアゼルバイジャン、セルビアなど独裁政権がうわべを飾ろうとすることをカネにつなげてきた。

そのブレアが、バーレーンの独裁政権の上層部と直接つながっているオフショア企業と関係があったことがパンドラ文書で明らかになったのも、特に驚く話ではない。

とはいえ、ブレアばかりをいじめるのは公平ではないかもしれない。彼もまた、民主主義の追求を放棄して、泥棒政治の支配者を通じて富を得てきた多くの元民主主義指導者の1人にすぎない。

ゲアハルト・シュレーダー前ドイツ首相はプーチンの最大の応援団の1人だ。アルフレート・グーゼンバウアー元オーストリア首相、ロマーノ・プロディ元イタリア首相、アレクサンデル・クワシニエフスキ元ポーランド大統領も、新進の独裁者たちに助言を与えるという名目でカネを手にしてきた。

民主国家の指導者は、欧米の最大の利益、つまりは民主主義の最大の利益のために働くというそぶりさえ見せなくなった。それどころか、欧米の元指導者は泥棒政治家を利用し、泥棒政治家は欧米の業界をいくつも利用して、それぞれ私腹を肥やしている。

カギは金融取引の透明性だが
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