先月18日、日本の反対側ブラジルで「日本移民の日」が祝われた。
それに続く様に、6月25日には静岡県人会の講堂にて第68回全伯歌謡・唱歌コンクールが4年ぶりに開催。
126名が参加するこの大会は伴奏も全て生演奏で行われるため、歌手たちにとって特別だそうだ。 私も演奏で参加させていただき、哀愁ただよう演歌と皆さんののど自慢に、遠きブラジルから亡き祖父を思い出すのであった。
こうして日本関連のイベントが続く中、日本好きだけでなくお祭り好きのブラジル人が毎年楽しみにしている日本祭り(フェスティバル・ド・ジャパン)が今年も開催され、3日間で18万5千人が会場を訪れた。
初めて行ってみた感想と共に現地からレポートをしたい。
|サンパウロ州公認、世界最大規模の日本祭り
今回で24回目となる同フェスティバルは、ポルトガル語では「フェスティバル・ド・ジャパン」だが、日系人や日本人からは「日本祭り」と呼ばれ親しまれている。
入場は有料(2023年は13~40レアル/割引あり)、会場のサンパウロ・エキスポまでは車かメトロの駅から専用バスが利用可能。
主催はブラジル日本都道府県人連合会で、会場の手伝いは県人会の会員やボランティアから成り立つ。
世界で最も日系人人口が多いブラジルの県人会の結束は固い。
日本人移民を乗せた笠戸丸がサンパウロ州のサントス港に着いた1908年から5年後、同県出身者の交流のために鹿児島県人会が設立。その後、福島、沖縄など移住者が多い県もそれに続き、1966年には県人会連合会が設立された。
ブラジルは現在47都道府県すべての会が存在する世界で唯一の国である。
県人会施設が最も多いのはリベルダージ地区*で、彼らは普段から積極的に活動しており、日本文化に関連する行事やカラオケ大会、青空市を開催する。
また、施設によっては宿舎も完備しており、ブラジル中に散らばった県人会の子弟たちがサンパウロの大学進学や予備校に通うために利用している。中には日本人の長期滞在者向けに開放している施設もあり、私の知り合いも何人かお世話になっている。
この県人会による屋台の食事を楽しめるのが日本祭りの最も面白いところであろう。
県人会にとっても日本祭りは会の維持費を稼ぐ大切なイベントである。
*リベルダージ地区については先月記事にしているので是非参考にしていただきたい
2023年6月15日投稿『なぜ東洋人街リベルダージの広場が「アフリカ - ジャパン」に改称されたのか』
|県人会屋台、全39店を一挙公開!
日本祭りに出店していた県人会の屋台を写真と共にご紹介したい。
*地域区分は県連ウェブサイトを参考し、写真内には公式パンフレット記載の注目商品を記載
*地図は簡易版を使用

photo by aika shimada
北海道 焼き魚、焼きイカ、ちらし寿司、メロンのシュークリーム、おにぎりやほうじ茶まである
青森 ブラジルでもよく食べられる品種フジを使ったリンゴジュース
岩手 わかめうどん、コロッケ わんこそば大会が別日に開催され毎年盛り上がっている
宮城 唐揚げ、おにぎり
福島 喜多方ラーメン
秋田 だまこ鍋 なまはげの客引きは果たして効果あるのか!?
山形 芋煮 ブラジルで馴染みのないコンニャクも入っている
群馬 シュークリーム、天ぷら、ホットロールと呼ばれる揚げた寿司
茨城 どらやき、カツサンド
栃木 栃木の焼きそば、餃子、のりまき 甘酒も売られている
東京 おからコロッケ、おにぎり
神奈川 ラーメン、餃子、焼売、肉まん 横浜中華街を再現
埼玉 カレーパン、クレープ、たい焼き
千葉 餃子、ホットロール、刺身 ブラジル人も良く知っているメニュー
長野 椎茸ご飯、野菜天ぷら、野沢菜(持ち帰り用)
静岡 すき焼き、抹茶のお菓子
福井 越前おろしそば、うどん
愛知 味噌カツ丼、あんかカツ丼
岐阜 たこ焼きをメインにしているが、五平餅や鶏ちゃん丼もある
石川 桜餅、おはぎ グルテンフリー表示もありがたい
富山 コロッケ ベジタリアン用もある
大阪 たこ焼き1本で勝負!
三重 いちご大福をメインに天ぷら、手巻き寿司、ホットロールなど
和歌山 毎年大盛況のお好み焼き
広島 ブラジルで広島のお好み焼きを食べられる場所は希少である
岡山 祭り寿司、栗饅頭、吉備団子
山口 瓦そば、いちご大福
鳥取 和牛の牛丼 和牛はブラジルでも取り扱いがある
徳島 たこ焼き 郷土料理ではなくブラジルでも人気の商品を選んだ
香川 やはり讃岐うどん!
高知 姿寿司、鯛の蒸し、カツオのたたき 珍しいので人気が高い
愛媛 うどん、えひめタルト 最近はリベルダージ地区のうどん屋も話題になっている
大分 とり天、だんご汁、牛たたき、焼酎「いいちこ」もある
熊本 くまもんセット、からしレンコン、きんぴらレンコン
福岡 とんこつラーメン コーヒーゼリー
宮崎 チキン南蛮や唐揚げ、餃子、天ぷら
佐賀 天ぷらアイス リベルダージ地区の屋台でも売られている
鹿児島 鶏飯、さつまあげ、かるかん饅頭、かしゃ餅
沖縄 沖縄そば、寿司、サーターアンダギー
ご覧いただいたように、日本各地の郷土料理を楽しむことが出来る。
県人会以外も、日系団体が食事やデザートを販売。食事エリアの中心でビールも売られている。
どの屋台も魅力的だが、今回は鹿児島県人会の鶏飯とさつまあげ、高知県人会のカツオのたたきをいただいた(お目当ての姿寿司と鯛は早々売り切れでカツオしかなかった)。
鹿児島県人会の屋台前で客寄せをしていた男性は「ブラジルで人気の焼きそばや寿司を出すところもあるが、うちは全て鹿児島の郷土料理にこだわっている」と話す。
実は鹿児島にも高地にも行ったことがなかったので、郷土料理をいただくのは貴重な体験だった。
また、日本祭りのために手作りしている長野県人会の野沢菜を試食したところ、とても美味しかったのでお土産に持って帰ることにした。
長野県人会のカウンターでボランティアをする日系3世のタイナ・オオノさんは祖父が長野県出身。
長野に住んだことはないが、今でも県人会ボランティアに参加していると流暢な日本語で話してくれた。
|ブラジル各地の日本人移住地ブースも
屋台でお腹いっぱいになったら、買い物が楽しめる。
特にブラジル各地に広がった日本人移住地から出品されるものは興味深い。
必ず立ち寄りたいのはアリアンサ移住地のひとつである弓場農場のブースである。
バレエや楽器演奏など芸術にも力を入れるユニークな弓場農場が作る味噌や福神漬け、ラー油、ジャムは絶品で、この日は羊羹や柚子を使った製品も購入できる。
また、ブラジル北部で最も古い日本人入植地で、国内外からも注目されるアグロフォレストリー農場を守るトメアス移住地のブースでは胡椒の販売とアサイーのアイスやアマゾン原産で栄養の高いクプアスのジュースを頂くことができる。
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|ブラジルでも馴染みある醤油や日本車
日本企業や日系企業のブースも大盛況である。
特に盛り上がっていたのはやはり食品を取り扱う企業で、キッコーマン、ヤクルトなどの商品が通常の販売価格よりもお得に購入できる。リベルダージ駅前にお店を構えるアジア系食材スーパー東亜のブースは入るのが困難なほどであった。
また、国内スーパーで流通するサクラ醤油を作るサクラ中矢食品では、自社製品を使った日本食のワークショップなども開催。
カシオの時計、ヤマハのバイクや日本メーカーの車の展示もあり、中でもトヨタ・ド・ブラジルは#FJTAONという若者アーティスト展示場のスポンサーにもなった。
花王のビオレ製品の販売や久光製薬のサロンパス配布、ブラジル進出を目指す企業の試食アンケートも行われていた。
|日本文化、そして日本行きが近づくブースも!?
もちろん展示は食品や商品販売だけではない。
各県人会による民芸品の展示、お茶のセレモニー、各団体による習字、折り紙、切り絵体験も楽しめる。
また、日本への留学相談や出稼ぎ相談、日本ツアーを案内する旅行業者のブースも並び、実際に日本へ行くきっかけを与えてくれる機会にもなるだろう。
特設ステージではのど自慢ステージや日本からのゲスト登場、ミス日系コンテスト、コスプレのコンテストなどが行われる。
会場内では太鼓のパフォーマンスもあった。
|テーマは「もったいない」
ここまで読んでいただいたとおり、私は初めての日本祭りを大満喫したのだが、気になる点があった。
今回の日本祭りのテーマは「もったいない」。
これはオフィシャルガイドや事前の宣伝でも大々的に書かれていた。 会場内の「もったいない」ブースには手書きでかかれた説明があったが、残念ながら立ち止まって読む人は殆どいなかった。
ブラジルのお祭りや飲食イベントではよくあることだが、日本祭りの屋台でも大量のプラスチック類が使われていた。
「もったいない」がテーマなのであれば、再利用への心がけや無駄をなくすような試みがもっと身近に感じられても良かったのではと感じる。
もしかすると会場のどこかでそういった心がけがあったのかもしれないが、注意しながら見ていても気付くことはできなかった。
|ブラジルにおける日系社会、日本文化の未来
そしてブラジル日系社会の最大の課題を日本祭りの中でも感じた。
それは「世代交代」である。
お気づきかもしれないが、ブラジルには47都道府県すべての県人会が揃っているにも関わらず、県人会の屋台は39店のみであった。
日本祭りに出店する意思のない県もあるようだが、人手不足のために出店できない県もある。
県人会は元々、一世の出身地やその子弟によって成り立っている。
同じ故郷をもつ人同士の交流や、故郷の文化を守るために結成されていたため、二世、三世、今では四世もいる中、故郷への想いは薄れ、県人会に入会しない日系人も増えてきた。
また県人会の中でも会員数、施設や資金事情によって盛り上がりも異なる。
サンパウロに着いた頃、とある県人会のイベントで会った一世や二世の方々に出身県を聞かれて「東京」と答えるとがっかりされ、"強豪"県人会こそ部外者に冷たいのかと感じることもあった。
しかし、出身県にこだわり続けると県人会はいつか存続が危うくなるのではないだろうか。
そんな中、茨城県人会のカウンターには自身が留学した筑波大学の所在地である茨城県の手伝いをしていた日系人女性がいた。
ご先祖様の出身県ではなく、"ゆかりのある人"が県人会と関われる雰囲気があるのは良い取り組みと感じる。
また、非日系の人々が積極的に参加できる働きも必要だろう。
一部の県人会でも非日系人会員がいるように、日本の文化を大切にしたいという人々が中心となって日本文化を盛り上げていく未来が近づいている。
まさに世代交代と共に組織の在り方が変わる時なのかと感じる。
これまでの功績を守りながら、新たなステップを踏み出す時が近づいているのだろう。
そのためにはウェブサイトやSNSの立ち上げは必須だ。
県人会はコミュニティ外に向けた発信が足りていない。
SNSを普段から活用し、日本祭りで郷土料理を食べてもらえるようなアピールをしてみたらどうだろうか。
ブラジルで知名度のある焼きそばやたこ焼きなどに比べ、殆ど知られていない郷土料理にこだわりを持って販売している県人会屋台に行列ができないことを非常に残念に感じた。
日本祭りでは、ぜひ郷土料理を食べていただきたい。
日本語とポルトガル語が混じる会場内でそんなことを考えながら、母国についてこんなに考えるようになったのはブラジルに着いてからだとしみじみ思うのだった。


























