スタジアムでの選挙集会にアホック追放デモの参加者がたくさんいたことからすると、ジョコの賭けは成功したといえるだろう。「マアルフ・アミンはジョコ陣営に活気をもたらした」と言ったのは、17年にはアホック追放デモに参加し、今回の選挙ではジョコに投票したという労働者のボイ・パクだ。

ジョコが選挙戦で当初から優位に立っていたことや、インドネシアには大統領の任期制限があるため3期目はないという事実からすると、2期目のジョコに対する国民の期待は相当に大きい。お世辞にも良好とはいえない人権状況の改善も急務だ。

14年に進歩的な波に乗ったにもかかわらず、ジョコは65年の華僑虐殺に対する説明責任や、急激に悪化しているLGBTの権利についてほとんど手を打っていない。

ジャカルタのシンクタンク、セタラ研究所によれば、宗教的な不寛容は彼の1期目に急拡大した。先住民は相変わらずないがしろのままだ。「誰が選挙に勝つにせよ、大統領には過去も現在も含めて、人権侵害を解決する義務がある」と、人権活動家のリニ・ズルリアは言う。

強権的な支配者がぞろぞろいる東南アジアで、インドネシアは最大の民主主義国だ。98年の民主主義革命から21年後の現状は、回復力のある民主国家が育つ可能性があるという証拠だ。

候補者のメンツは同じなのに、「今度の選挙は前よりひどかった」と言ったのはジャカルタ育ちのイスマン・アフマド・チュアニ。「それでもこれが民主主義。民主主義は守らなくちゃ」

<本誌2019年4月30日/5月7日号掲載>

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