だから、トランプ政権は中国の米企業買収や米企業への投資を阻止したいと思っても、一直線に中国をターゲットにした強硬な対抗法案を決議することができず、やむなくCFIUSを介して迂回しなければならなかった。
グローバルなつながりが絡み合い、複雑な「作用・反作用」の原理が動く中で、もし「○○戦」という単語を使いたいのなら、むしろ「熱戦」と言うべきで、米ソ対立時代になぞらえた「新しい冷戦」という概念を用いてしまった瞬間に、米中の実態を見失う。
困り果てたアップル
その証拠の一つに、中国製品に対する関税を10%から25%に引き上げたときのアップルの困惑がある。
アップル製品の多くは台湾企業を通して、中国大陸で製造している。受託しているのは台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業だが、鴻海が中国大陸に持つ生産拠点で製造している。賃金が安いからではない。大陸には膨大な数のエンジニアという「人材」がいるからだ。
いま米中対立の根幹になっている「中国製造2025」が発布された原因の一つも、実はこの事実と深く関係している。
たとえば、一台のiPhoneの利潤に関しては、理念設計側のアップルが80ドルほどを儲け、中の構成要素である半導体などのキー・パーツを製造する日本企業は20ドルほどを稼ぎ、そして組立作業しかやっていなかった中国は、ほんの数ドルしか稼ぐことができない。これが2012年9月の反日デモのときに若者の不満として噴き出した。
今般のトランプの「中国製品に対する関税を10%から25%に引き上げる」という表明に関して、アップルは猛然と反対。アメリカの消費者の反発も招くのは明らかだ。
そこでトランプはアップルのハイテク製品の関税だけは10%に留めるかもしれないと、ほのめかしている。それでもトランプの「10%から25%」にという発言が報道された瞬間に、アップルの株価は下落した。
なお、アップルのティム・クックCEOも、顧問委員会の委員である。
ことほど左様に、米中は貿易や金融、投資そして人物など、すべての面において絡み合い、「熱い戦い」を繰り広げていることを、見逃してはならない。
詳細は、来月出版される『「中国製造2025」の衝撃習近平はいま何を目論んでいるのか』で分析した。
