今年最初の記事なのに、こんなタイトルですみません。でも、ついにきたのだ。コロナウィルスに感染してしまった。といっても幸いなことにとても軽症で、病院にも行かずに終われそうだ。こう見えて心配性なので、夫に疎ましがられるほど気をつけていたし、「あなたみたいに外に出ない人が罹るわけない!」と周りにからかわれてもいた。3度目のワクチン(通称ブ―スター)も11月の終わりに打っていた。そんなわたしが感染するなんて。

 この経験が何かのご参考になったら幸いです。

まずは英国のコロナ状況

 わたしの経験をお話しする前に、まずは英国のコロナ状況を簡単にお伝えしよう。

 全世界と同様、昨年12月から英国でもオミクロン株の感染が急拡大していた。感染者数はぐんぐん記録を更新して、12月31日には1日189,836人、年が明けて1月4日には218,724人という最高記録が出てしまった。昨年のクリスマスははっきりした規制がなかったので、家族で集まったところも増えたからだろう。英国全体で15人に1人、ロンドンでは10人に1人の割合で感染していた計算になるそうだ。その後は感染者が少しずつ減って、1月15日には81,725人まで下がり、ピークは過ぎたのでは? と言われ始めている。

 感染者数は日本とはまさに桁違いだけれど、ただ単純に数を比べることはできないと思っている。というのは、英国ではラテラルフロー検査(自宅でできる簡易な検査で、結果も30分で出る。以下「自宅での検査」ともいう)が無料で配られて、学校や仕事など人と会う前に検査をすることが強く勧められているからだ。検査数が多いから、陽性者が見つかる可能性もぐっと高くなるんじゃないかと思っている。それにしても多いけど!(ラテラルフロー検査を実際にやってみた記事はこちら

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国から無料で配られるラテラルフロー検査キットの箱と、検査結果が表示される検知器。キットの箱は奥が初期によく見たもの、手前は最近よく見るもの、最近はまた違う種類も出てきている。右の方の検知器は、陽性になった時の記念すべきもの。赤い線が2本入っている。検査キットは郵送でも薬局でも簡単にもらえるはずなのだけど、自主的な検査数が急増したせいか、年明けぐらいまでとても手に入りにくかった。この数日でやっと注文できるようになったものの、今後は有料になるという話も出始めている。さて、どうなるだろう。筆者撮影

 昨年の12月からはコロナに感染したという話を身近にずいぶん聞くようになって、オミクロン株の急拡大を肌で感じていた。わたしが感染したことを話した時も、日本の家族や友人はひどく心配してくれたけれど(驚かせてごめんなさい)、こちらの家族や友人は、体調を気遣ってくれつつ、たいてい冷静で、「ついに順番が来たね、次はぼくの番かも!」という冗談を何度か聞いたほどだった。

 それでも、イングランドでは12月に飲食店やナイトクラブを閉めず、ワクチンを打って、積極的にラテラルフロー検査をして、経済のためにも「気をつけて」外出、外食しようと呼びかける程度だった。気をつける基準があいまいだったので、戸惑う人も多かったけれど。

 年が明けて感染者数が減ってきた今は、イングランドより厳しかったウェールズなどの規制も緩められ始めた。英国全体での12歳以上のブースター接種率は現在、63.1%。

いよいよ感染

 では、わたしはいつどこで感染したか。空気感染もあるということだから、正確にはわからないけれど、やっぱりクリスマスじゃないかと思っている。わが家では結局、夫の娘の家に集まったのだ。あまり気乗りはしなかったのだけど、パパ大好きな娘が張り切って、「タカコは気になるんでしょ、ちゃんと気をつけるから」とまで言ってくれたので断れず。一応、自宅の検査で陰性を確認してから出かけた。

 12月25日に集まったのは全部で8人。会えばもちろん楽しくて、久しぶりに近況を話したり、プレゼントをわいわい開けたりと、よい午後だった。娘の配慮で換気のために窓をずっと開けていたので、寒くて風邪をひくかと思ったけれど。

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 家に帰った翌日から、気になったので自宅での検査を始めた。結果はずっと陰性。ところが3日後、集まったうちの1人が陽性になったと連絡があった。そしてその翌日になんともう1人。濃厚接触者になったわたしたちは、ワクチンを打っているので隔離は必要ないものの、自宅での検査が義務になった。

 検査を続けていると、1月1日の午後に軽く咳が出始めた。あわててまた検査してみると、初めて陽性の結果が出た。夫は陰性。感染したのはわたしだけだった。

 陽性になったのは年明けだったけれど、実は年末からひどく疲れる感覚があって、あの時感染していたのかもしれないとも思う。倦怠感がオミクロン株の初期症状であることは知っていたけれど、自宅の検査では陰性だったし、慌ただしい12月と気乗りしないクリスマスが終わって、疲れが出たのかなと思っていた。疲れを感じるだけでPCR検査を受けるなんて、大忙しの医療現場に迷惑そうだし。周りの話を聞いていても、症状のはじまりと陽性診断の時間差はよくあることのようだ。PCR検査を受けるタイミングは悩ましい。

感染後のNHSでの手続き

 とにかく陽性が出たので、結果をNHS(国民保健サービス)にネットで報告した。すると、すぐに携帯とメールの両方に連絡があり、あとは指示にしたがって行動するだけだった。インターネットを使う環境がない人には、NHSは電話でも応対している。わたしの場合はこの後、濃厚接触者である夫と一緒にPCR検査→アプリとネットで感染前の行動を報告→自主隔離開始という流れだった(現在では、自宅の検査で陽性が出たらPCR検査での確認は不要になっている)。

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公園の一角に設置されたPCR検査場。この時は郵送のPCR検査にも近くの検査場にも空きもなく、約6キロ先の検査場まで歩くことになった。陽性者はバスやタクシーに乗ることができないので、自家用車も処分してしまったわが家には、他に手段がなかったのだ。分厚いマスクをして往復12キロ、約3時間。ふだんでもなかなか歩かない距離だ。軽症で本当によかった。そのうえ陽性者はどこにも行ってはいけないので、途中で夫に買ってもらったコーヒーを歩きながら飲んだだけで、休憩もせずにとんぼ帰りした。この先の自主隔離に備えて、外の空気をいっぱいに吸い込んだ。筆者撮影

 PCR検査は翌日の1月2日に予約が取れた。上のキャプションで書いたように会場までは長い距離を歩くことになったし、予約時に入力する情報も多かったけれど、検査自体はQRコードを見せるだけで効率よく終わった。72時間以内と言われた結果は、わたしには当日の夕方に「陽性」と知らせが来た。夫への連絡は翌日。結果は陰性だったので、陽性と陰性では調べ方が違うのかもしれない。

 PCR検査から帰ると、感染前の行動について質問に答えるようNHSからメールが届いていた。ワクチンを受けた日程や種類、感染前に行った場所や会った人(名前や住所も含む)など、かなり詳しい質問だ。わたしの場合は12月24日から28日までの行動について聞かれたのだけど、その間に会ったのはクリスマスに集まった家族だけだ。「感染したと思われる場所」には「たぶん家族の集まり」と書き込んだ。スマホにダウンロードしたNHSのアプリでも同じような質問に答えていたら、そちらでは、一定期間に会った人には自分からも陽性になったことを知らせるように指示された。

 そして、わたしの自主隔離が始まった。どんなに軽症でも、陽性と診断されたら伝染を防ぐために最低でも7日間は外出することができない(1月17日から5日に短縮される)。隔離については、症状の後にまた続きを。

とても軽かった症状

 年明けと同時に軽い咳が出始めたわたしは、幸いその後も、ほぼ無症状といっていいくらい軽症で、食欲もしっかりあった。咳のほかには、たまに微熱(最高で36.9度)を感じ、3日目ぐらいからは嗅覚と味覚が弱くなった。感覚がまったくないわけではないけれど、コーヒーの香りもほんのりとしかわからない。全体に症状が軽いのでオミクロン株に感染したのかと思っていたけれど、オミクロン株では味覚や嗅覚の変化はあまり出ないらしいので、デルタ株だったのかもしれない。PCR検査ではどの株に感染しているかは教えてもらえなかった。

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NHSのアプリでは、自主隔離期間をカウントダウンしてくれた。これは「1月11日まで、あと8日」と示している。NHSからの連絡は効率がよくて、隔離中も、「病状が悪化したらご連絡ください」「経済面や精神的に困った時にはご相談ください」と毎日のようにフォローのメールが来ていた。ただPCR検査の予約や感染前の行動の報告では、かなり細かい質問にたくさん答えることになるので、症状が重い人には辛そうだ。筆者撮影

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 特徴的に思えたのは、症状が日によって変わったことだ。咳が出たかと思うと次の日にはすっかりおさまって、またその翌日に始まってみたり。微熱も味覚や嗅覚も日によって程度が違うように感じた。特に最初のうちは元気だったので、調子に乗って仕事もしていたけれど、あまりに体調が上がったり下がったりするので、後半は安静に努めた。静かに寝ていると、胸のあたりになんとなく炎症があるのが感じられた。

 感染したと話すと、友人、知人がいろいろな体験を教えてくれた。本人やその知り合いたちも含めた、40人分ぐらいの話をざっくりまとめると、やはりワクチン、特にブースターを打っていると、感染してもわたしくらいの軽症で済むことが多いように思う。政府も、重症化している人の多くはワクチン未接種だと発表している。もちろん個人差があることだし、あくまでわたしが受けた印象だ。

自宅での自主隔離

 先ほども言ったように、どんなに軽症でもコロナに感染したら自主隔離する必要がある。隔離中は家を出られないだけでなく、家族が陰性なら家の中でも決まった場所にこもることになる。寝室も食事も家族と場所を変えて、共有部分には行かない、バスルームを共有する時は家の中でもマスクをする。わが家も夫は感染していなかったので、わたしは寝室と小さな仕事部屋だけにこもり、食事はお盆に乗せてドアの外に置いてもらっていた。

 この自主隔離が思ったよりも辛かった。小さなフラット(集合住宅)の中で夫にうつさないように気を遣ったからだ。なんだか自分が空気中にウィルスをふりまいている気がして、部屋から出るのがとても怖かったし、バスルームに行く時は息をできるだけ止めたり、やたらに消毒をしたりと、なんだか気疲れしてしまったのだ。われながら真面目すぎる。ちょうどお正月だったので隔離に入る前におせちもどきの残りをあわてて冷凍庫に突っ込んだり、小さな家の中で電話しあったりと、おもしろい経験でもあったのに。その時には余裕がなかったんだな、残念。

 隔離の間は、わりとふつうに過ごしていた。部屋から出ないのは翻訳者のふだんの生活そのものなので、それ自体は苦痛ではなかった。前半は仕事もして、後半は本を読んだり眠ったりして過ごし、(楽しすぎて危険なので)ネットフリックスは部屋につながないようにした。楽しみは、家族や友人とのやりとりだった。ちょうど同じ時期に自主隔離していた友人と励まし合ったり、いろいろな人からお見舞いの言葉をもらったり、感染の経験を聞いたり。やさしさが身にしみた。噂を聞きつけたご近所さんが「代わりに買い物するよ!」と声をかけてくれたのも嬉しかったし、毎日ソファーに寝てくれた夫にも感謝。

 わたしが自主隔離していた1月初めには、2日連続で陰性が出たら、最短7日目で隔離を終われることになっていた。8日目、9日目に陰性が出たものの、ちょうどそのタイミングで咳がひどくなってしまったので、丸10日間、外出せずに隔離を終えた。

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隔離が終わった翌日はよく晴れたので、10日ぶりに外に出て近くの緑地を散歩した。まだ咳が出たので、マスクをしたままだったけれど、外な空気も青空も気持ちがよかった。健康って幸せだ。カズオ・イシグロの『クララとお日さま』(土屋政雄訳)のような写真も撮れた。筆者撮影。

 現在は陽性診断から15日目。すっかり陰性になったが咳がまだ残っている。陽性だった時に元気すぎたせいか、今の方が咳はひどく感じられる。嗅覚は完全には戻っていないものの、アールグレイの香りが少し感じられるようになって喜んでいる(日常のささやかな楽しみがあるのは本当にありがたいことだ)。陰性になったらすぐに体調がよくなるものと思い込んでいて、後遺症の可能性もあることをすっかり忘れていたけれど、咳が長引くとか、味覚や嗅覚がなかなか戻らないとか、まさに同じような話をずいぶん聞いていたのだった。

 ただ、陽性診断から14日経つと人に感染させる確率は1%まで減るそうなので、とりあえず散歩くらいは出てもよさそうだ。咳が出るうちは人前に出るのは控えつつ、あとは自分の体調を整えていくつもりだ(今は薬局で勧められた液体の咳止めを飲んでいる)。後遺症とか、何か特徴的なことがあるようだったら、またご報告します!

 コロナはもう少し続きそうですが、みなさん、どうぞお気をつけてお過ごしくださいね。

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隔離中に夫が作っていた2つめのジグゾーパズル。陰性の夫は隔離する必要はなかったのだけど、仕事先にわたしのことを話したら1週間休むことになった。確かに、家にコロナ患者がいる人に会いたいとは思わないだろう。迷惑をかけて申し訳ないと思ったが、本人は楽しそうにパズルをしたり、本を読んだり、マーマレードを作ったりしていたので、別によかったみたいだ(1月はマーマレード作りの季節だ。いつもなら家中がオレンジの香りでいっぱいになるのに、それがわからないのも切なかった)。筆者撮影