イングランドでは6月21日にコロナ規制が完全に取り払われる予定だった。が、感染力の高いデルタ株が相変わらず急拡大しているので、期日が4週間延びることになってしまった。この日に向けて準備を進めていた業界は大打撃で気の毒だけれど、焦って解禁しても、すぐにロックダウン生活に逆戻っては意味がないので、これでよかったと個人的には思う。
最近見つかったコロナ感染の90%がデルタ株と言われている。患者は圧倒的に25歳以下の若者。まだワクチンを打っていなくて、でも外で遊びたくてたまらない世代だ。そこで、政府は延期した4週間の間に若者層のワクチン接種を一気に進める予定でいる。6月18日からは予約できる年齢が18歳に引き下げられ、この週末には予約せずに飛び込みで注射が受けられる会場も設置されている。
デルタ株の拡大は心配だけれど、わたしたちの暮らしには春先から少しずつ日常が戻ってきている。レストランでご飯も食べられるし、友だちの家に行くこともできる。映画館や美術館に行ったり、スタジアムやパブで人と一緒にサッカーを観たりもできる。まだ制限付きとはいえ、家から出ることさえできなかった去年の春に比べたら夢のような話だ。
わたしも少しずつ友人に会い始め、気持ちがずいぶん和んできだのを感じる。何か月かぶりかに広い空間で見たアートは心にも体にも染み込むようだった。ちょうど夏至が近づく今の時期は一年のうちでもいちばん気持ちのいい季節。日も長くなり、真夏のような天気も続いて、春先よりぐっと心持ちが明るくなっている。

これから出かける機会が増えてくるのは嬉しいが、やはりまだ不安でもある。外に出れば人と感染し合う確率が上がる、とつい思ってしまうからだ。わたしはワクチンを2度打ったし、英国全体でもワクチンが完了した人が60%に達するというのに。コロナ禍の長いロックダウン生活で植え付けられた恐怖は、思った以上に心の奥まで染み付いているのかもしれない。そこで、政府が配布しているコロナ簡易検査キットを使ってみることにした。簡易検査でも陰性と出れば、少しは不安が和らぎそうだ。
4月からイングランドでは自宅で簡易検査ができるキットを誰にでも無料で配っている。このキットを使うと、「ラテラルフロー」と呼ばれる、30分で結果が出る抗原検査をすることができる。コロナの症状がある人はすぐに本格的なPCR検査を受けることになっているので、この検査の対象は症状のない人だけだ。簡易検査なので結果は完全とは言えないものの、その時点で人に感染させる確率がほぼないとわかるそうだ。
学校で広く使われているとニュースで読んだ気がしたけれど、周りに話を聞いてみると取り入れ方は学校によってまちまちなようだ。週に2回、必ず結果を報告しているところもあれば、何もしていないところもある。ちなみにわたしが実際に知っている成人で、この検査を実行しているのは今のところ1人だけだ。
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ウェブサイトには、キットの受け取り方はオンラインで注文して郵送で(1、2日で届くそう)、職場や学校を通じて、NHS(国民保健サービス)が登録した薬局で、などと書いてある。ところが先日、ロンドン市内で道行く人にこれを配っているのを目撃した。道ばたで、まるでティッシュでも配るように箱を渡していたのだ。場所は若者が集まるソーホー近く。検査が思ったほど広まらなくて配っているのか、それとも若者にも積極的に検査を受けてほしくて始めたのか。ただ残念ながら、その場で受け取っている人はほとんどいなかった。ティッシュを受け取る確率より低かったんじゃないかと思う。確かにこれを道ばたでいきなり渡されてもちょっと怖いし、本物かどうかどうかも確かめにくい。わたしも受け取らない気がする。もっと派手に宣伝しながら渡したら受け取るかしらん。
今回わたしは薬局でキットをもらうことにした。処方箋カウンターでキットの話をすると、住所も名前も聞かれず、あっけないくらい簡単に箱をぽんと手渡された。一応ね、という雰囲気で、使う人の年齢と使う目的を質問されただけ。ちょっと拍子抜けだったけれど、個人情報は検査結果とともに知らせるので、この時点では必要ないと後でわかった。
そしてもらってきたパックに入っていたのが、こちら。1箱に検査7回分が入っている。

先日、日本の友人とオンラインでおしゃべりしたとき、彼女も職場でもらって持っていると言うのでお互いに見せ合ったのだけど、彼女のキットはアメリカ製。検査方法はよく似ていた。調べてみると日本でも無料配布している地域や職場があるようだ。(追記:日本の友人のキットも中国製だったと初めに書きましたが、アメリカ製だと指摘してもらい、訂正しました。最初に読んだ方、失礼しました!)
そして、いよいよキットを使ってみた。説明書は図入りでかなり詳しく、まず手を洗って、検査する場所も清潔にしましょうというところから始まっている。準備として、柔らかいプラスティックの小さな試験管状のものに試薬の液体を入れ、中箱に開けられた穴に入れて立てておく。一度鼻をかんで余分な水分を出し、さらにもう一度手を洗って検査を開始。

まず長い綿棒のようなもので検体を取る。喉の奥、扁桃腺のあたりを左右4回ずつぐりぐり、その後に同じ綿棒で鼻の奥をやはり左右4回ずつぐりぐりする。「痛く感じるほど深く入れてはいけません、でもあまり浅くてもサンプルが取れません」とあるので、ゆっくりと奥の方まで入れてみたけれど......思い出すのもいやなレベルで不快だった。検査をできるだけ避けるためにも、感染は絶対にしたくないものだ。これを週に2回もやっている人、特に子どもたち、本当にえらい。何度もやっていると慣れるのかな。
その後、立てておいた試験管に綿棒を入れ、試験管自体をぎゅうぎゅうと揉むように15秒間押して検体と試薬をよく混ぜる。さらに試験管に付いているスポイト状のフタをかぶせ、そこから検知器に試薬を2滴たらす。30分待って、判定窓の両方に線が出たら陽性、線がCに1本だけならめでたく陰性、線がまったく出ないか、Tに出たら無効(下の写真をご覧ください)。わたしは無事、陰性だった。

検査の後は、電話かウェブサイトでNHSに結果を報告する。サイトから入力すると初回だけアカウントを作ることになるが、その後は検知器にあるQRコードかID番号と結果を入力するだけで、いたって簡単だ。しつこいようだけど、陽性の人はすぐにPCR検査を受けましょう。
この検査は週に2回受けることが推奨されている。今回は陰性とわかって、外出する時の不安は少し和らいだものの、これから何度も綿棒ぐりぐりをするかと思うと、今度はそっちでなんだか気が重くなっている。ああ、もうほんとに早くコロナ終息して。