何重にも入り組んだペーパーカンパニー

今回の株取得においては、取引の構造が非常に複雑であるために、舞台裏で誰が資金を供給したかが判断しにくくなっている。

書類上、Tenaciou3は別の香港企業「Fujikiro Ltd」に所有されており、Fujikiroでは第3の企業である「Miroku Ltd」を取締役として登録している。公的な記録によれば、この両社の他の取締役はすべて国際的な法律事務所である金杜法律事務所のシニアパートナーである。

ロイターが閲覧した書類のいずれにも、李書福氏の名前は見当たらないが、彼はTenaciou3が保有するダイムラー株の所有者は自分であると公言している。

ペーパーカンパニーを投資ビークルとして用い、富裕な投資家の代わりに弁護士が取締役を務める手法はかなり一般化している。

金杜法律事務所はコメントを拒否している。

今回の株取引に詳しい吉利関係者によれば、ペーパーカンパニーが設立された理由の1つは「オフショア買収」取引のためであり、資金が中国本土から外国に移転するような取引に関して最近厳しさを増している中央政府の監視を免れるためだという。

吉利は、今回の株取引のための資金はすべて中国国外で調達されたものだと話しているが、業界コンサルタントらは、香港企業を使っているせいで、資金の調達先を検証することは困難になっているという。

吉利が直接傘下に置いている別のペーパーカンパニー「Tenaciou3 Investment Holdings Ltd」は、香港当局に提出された12月5日付の契約によれば、中国の興業銀行<601166.SS>香港支店から16億7000万ユーロ(約2200億円)の融資を受けている。

ダイムラーの提出書類によれば、Tenaciou3 Prospectをコントロールしているのは、李軼梵氏を取締役とするTenaciou3 Investment Holdingsであるとされている。

Tenaciou3 Investment Holdingsは、保有するTenaciou3 Prospect Investmentの株式を上記融資の抵当としている。

興業銀行との融資契約では、融資された資金の使途は明らかにされていない。

中国南東部の福州市に本社を置く興業銀行にコメントを求めたが、回答は直ちに得られなかった。

欧州外交評議会(ECFR)でアジア担当上級政策研究員を務めるアンゲラ・スタンツェル氏は、ドイツでもっぱら懸念されているのは、透明性の欠如だという。

スタンツェル氏はロイターの取材に対し、「問題は、どこから資金が出て、今回の株式取得が実際にどのように行われたのか、という点だ」と語った。

(翻訳:エァクレーレン)

Adam Jourdan and Norihiko Shirouzu

[上海/北京 2日 ロイター]

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