グラフィック・デザインとは、情報と人々の理解との間をつなぐ仕組みづくりでもある。「たとえば横軸を時間軸とみなし、人数の多さは人の大きさではなく、並べられた同じ大きさの人の数の違いで示すこと。地図表現などで理解の妨げになる情報を削ぐこともその一環です」

 廣村さんは、アイソタイプのルールにも言及する。8色を基調とし、書体はFuturaのみを使用。ほかにもデータを収集する専門家、ビジュアル化するデザインチーム、両者をつなぐトランスフォーマーというチーム編成で制作に臨むことが特徴的だ。デザイナーではないノイラートが視覚言語の体系を提唱したことはもちろん、いずれの仕事も美しいことにも驚かされる。

「情報の美=ノイラートといってもいいくらいですよね。人は情報を視覚から得て"わかる"喜びを、どこまでも欲する。これは根源的な欲求です」

 ノイラート自身も「近代人は映画やイラストに親しんでおり、これら娯楽の中で、目を通じて楽しみながら知識を得ている。こういった方法を社会的教育にも用いるべき」と述べていた通り、楽しさは意識していた。美はそれを支えるひとつの要素だったのだろう。

 彼は情報に形を与えただけではない。それ以上のものをもたらしたからこそ、アイソタイプは世界中に影響力をもった。情報の美を生んだノイラートの意志は時を超えて、現代のデザイナーにも継承されている。

(Text:立古和智)

廣村正彰 Masaaki Hiromura

アートディレクター

1954年、愛知県生まれ。77年に田中一光デザイン室に入社、88年廣村デザイン事務所設立。2009年毎日デザイン賞、10年グッドデザイン金賞ほか多数受賞。主な仕事にすみだ水族館VI、サイン計画。

※第3回:戦後日本のグラフィック・デザインをつくった男、亀倉雄策

【参考記事】スヌーピーとデザインと村上春樹――ブックデザイン界の巨匠チップ・キッドに聞く


『Pen BOOKS 名作の100年 グラフィックの天才たち。』

 ペン編集部 編

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