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これも20年ほど前に取材した300平米台マンション住戸の玄関部分。今は、こんなに広い玄関を備える数億ションにはお目にかかれない。まだ若い頃の筆者がフィルム撮影した

さらに、客が使用するための大型クローク、一部泊まる人のためのバストイレ付き寝室などを設置したり、パーティを開いている間、家族がいつもの生活を行えるようにプライベートLDKと個室が用意されていたりすることもあった。

それらに加え、メイド室などもつくると、300平米、400平米の広さが必要だったのである。

当時の高額住戸には、玄関を2つ設けたものも少なくなかった。

「正門と通用口」という区分けではなく、もうひとつの玄関もまあまあ立派につくられた。パーティに来る客と顔を合わせないで済むように、家人が日常的に使用する玄関をもうひとつ設けたわけだ。

しかし、2010年頃から、そんな豪華客船のような間取りは分譲マンションから姿を消すようになった。2008年のリーマンショックの影響か、ホームパーティを頻繁に開く外国人が減ったためだ。日本では、ホームパーティを開くより、料亭でヘルシーな日本料理をいただくほうが人気になったのかもしれない。

今は120平米程度が人気。広くても200平米程度に

もうひとつ、2010年以降、そこまで大型の住戸がつくられなくなった理由がある。それは、「将来の売りやすさ」を重視するようになったことだ。

300平米、400平米もの広さになると、取引価格は高額になる。山手線内側エリアでは新築価格が10億円どころか、30億円、40億円という金額になりかねない。

それだけの高額マンションを買ってしまうと、中古として売るときに苦労する。中古でも10億円をゆうに超える金額となり、それだけの現金を右から左に動かせる人は限られるからだ。

買い手が現れにくい場合、売値を下げればよいのだが、それはしゃくに障る。売るのをあきらめると、巨大なマンション住戸が、お荷物になってしまう。

そこで、今は、数億ションでも、120平米から140平米くらいの広さが売れ筋になっている。その広さであれば、中古価格が数億円で納まるので、買い手が多い。つまり、処分しやすいわけだ。

お金に余裕がある人は、120平米の住戸を複数購入する。そのほうが合理的だと考えられている。

もちろん、もっと広い住戸が欲しい、という人はいるので、大型住戸は今もつくられる。が、その広さはせいぜい200平米台までだ。

300平米を超える特大住戸は、すっかり影を潜めている。

かつて、100畳大もつくられたリビングもだいぶ小さくなった。それでも、50畳程度の広さがあるのだが、大型のソファセットを置くと、それほど広くはみえない。

住戸の広さは控えめだが、その分、室内のインテリアや設備にはたっぷりお金をかける。それが、数億ションの新しいトレンドなのである。

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窓が湾曲し、個性的なシステムキッチンを備えるのは「パークコート神宮北参道 ザ タワー」のモデルルーム。同マンションの最高額住戸は約237平米で13億7000万円だった。昨年秋、スマホで筆者撮影

※当記事はYahoo!ニュース個人からの転載です。

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