美しい紅海と砂漠、遊牧民ベドウィンの文化──昔から世界の多くの人々を引き付けてきたエジプト東部のシナイ半島。なかでも南端のシャルムエルシェイクは人気のリゾートだ。

 しかし「アラブの春」による政情不安で、同国を訪れる観光客は大幅に減少。紅海沿岸地方の人々にとって、11年のエジプト革命の舞台となった首都カイロのタハリール広場は、「大惨事」と同義だ。最近ではテロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)傘下の過激派の北シナイ占拠も話題になった。

(編集部注:今年10月31日、シャルムエルシェイクを離陸後にエジプト・シナイ半島で墜落したロシア・コガリムアビア航空の旅客機に関して、ISIS系の組織が「撃墜した」という犯行声明を出している。)

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 そんななかでも、シャルムエルシェイクはロシアや東欧、中東の観光客を呼び込み、息を吹き返しつつある。だが他の地域では建設途中のままうち捨てられたり、人けのないホテルや巨大施設が目立つ。

 観光開発はシナイをすっかり変え、地元文化と懸け離れた人工的な建物だらけの場所にしてしまった。フランスの人類学者マルク・オジェが言う、標準化されて個性を失った「ノン・プラセ(非場所)」だ。そんなシナイの今を、写真家のアンドレアとマグダはカメラに収めた。

 空っぽになったその舞台では旅行者やベドウィン、労働者それぞれが与えられた役柄を演じているようにも思える。

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シャルムエルシェイクの砂漠を四輪バイクで走る観光客向けツアー。ラクダ乗りや、ベリーダンスショー付きディナーなどが含まれるものが多い
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ラス・モハメッド国立公園のビーチでガイドの話を聞くロシア人観光客。美しい自然が保護されているラス・モハメッドは人気の旅行先で、団体ツアーも多い