日中関係が最悪になり、日本人客が減った

そうして2007年、歌舞伎町一番街の雑居ビル4階に湖南菜館をオープンする。コックは湖南省から呼び寄せ、内装には結構な手間とお金を掛けた。特にトイレは「歌舞伎町で一番キレイ」なトイレにしたつもりだ。

しかし、日中雪解けのムードはそう長くは続かなかった。2010年には尖閣諸島中国漁船衝突事件に伴う日中対立、2012年には尖閣諸島国有化に伴う反日デモが中国各地であり、日中関係は一気に最悪のレベルにまで落ち込んだ。

「国と民間は別物。国同士が対立している今だからこそ、個人同士では仲良くやりましょう」

日本の友人とはよくそんな話をしたのだが、ことレストラン経営に関しては日中関係の悪化は絶大な影響をもたらした。日本人客が一気に減ったのだ。中華レストランに経済制裁をするつもりはなかったと思うのだが、中国のイメージが悪化すると中華を食べようという気持ちも失われてしまうのだろうか。

もちろん、中国で営業していた日本料理店のほうが状況は深刻だったろう。中国人ならば「このご時世で日本料理を食べれば売国奴と批判されかねない」という恐れがあるからだ。ただ程度の差こそあれ、日本の中華レストランも政治に振りまわされる状況があったことはお伝えしておきたい。

中国人のお客さんが増えた2つの理由

この2年間、我が湖南菜館には中国人客が増えている。その理由は2つある。第一に私が中国でテレビ芸能人になったためだ。

私は2015年に日本国籍を取得し、新宿区議選に立候補した。以前にも本コラムでお伝えしたが、出馬後に私は中国のメディアでひっぱりだこになった。自分たちの知らない民主主義を体験した「元・中国人」に興味を持ったのだ。

その前から作家としてはそれなりの知名度があった私だが、テレビの影響力ははるかに大きい。顔を覚えてくれる人も増え、中国の街中で声をかけられることもしばしばだ。ある中国の空港では入国審査官がスマホで私を隠し撮りしたことまであった。有名人の写真が欲しかったのだろう。

ともあれ、歌舞伎町案内人というだけでなく、民主主義を知る男としても今、私の需要は高まっている。

第二に中国人観光客の数が増えたためだ。2015年は「爆買い」が新語・流行語大賞に選ばれた年である。大量の中国人観光客が日本に押し寄せてきたわけだ。「李小牧に会いたい」というお客さんも多いが、日本料理はどうしても食べ慣れないから本場の中華料理が食べたいという人も多い。旅行疲れした人をターゲットに中華粥をメニューに加えたところ、売り上げは上々だ。

未来の湖南料理を先取り