しかし、政権指導部が政治指導者の政治的権威の強化を必要とする背景は、今と80年代末とでは異なるところもある。1980年代末は経済発展を追求するためであった。一方で習近平の場合は経済成長の結果、百出している社会問題を克服するためだ。前者は経済成長の成果というパイ(pie)を拡大するための政治的権威の強化であった。後者はパイを分配するために、政治的権威を強化しようとしている。
「核心」はパイを公平に配分できるのか
今後中国政治に求められるのは如何に配分するのかだ。分配は難しい。パイが拡大してゆく過程は、その分配は先鋭化した問題にはならない。今日の配分に不満があっても、未来に期待できるからだ。しかし、パイの拡大を期待できない過程では、今日の配分は重要だ。未来の配分はもっと期待できないからだ。
また、パイの中身は経済成長の成果だけでない。持続的に成長するためのコストも含まれている。今日の中国社会は経済成長のコストの配分のありかたについて神経を尖らせている。日本と同じように、ゴミ焼却場をはじめとする今日の消費社会を支えるインフラの設置場所をめぐるトラブルなどNIMBY(Not in My Backyard=「うちの庭は嫌」) 現象が中国でも普遍的に見られる。強い政治指導者だからといって、社会の構成員がみな満足するようなコストの配分ができるとは限らない。公平さが期待される。配分のありかたについて、習近平政権は解を見出しているのだろうか。
【参考記事】世界2位の経済大国の「隠蔽工作ショー」へようこそ
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「ポスト習近平」の選び方
もうすこし短期的に考えれば習近平の「核心」化は、ポスト習近平の政治にむけた布石ともいえるだろう。
これまでの慣例にしたがえば、2017年秋に開催が予定されている19回党大会は、2022年以降の中国政治の舵取り役を担う中国共産党政治局常務委員会のメンバーを選出する場となる。中国共産党の党内には、「七上八下」(67歳は留任、68歳は引退)といわれる定年制度がある。この制度が厳格に適用されるのであれば、19回党大会で、政治局常務委員会の7名の委員のうち総書記である習近平と国務院総理である李克強を除いて、全員が引退する。彼らに替わって新たに政治局常務委員会に入ってくる委員が「ポスト習近平」となる。彼らはどうやって選ばれるのか。
習近平が政治局常務委員会に入ったのは2008年の17回党大会である。このとき習近平と李克強は、中国共産党党内の中央委員会レベルの幹部による「投票」を経て政治局委員、および同常務委員に選ばれた。その後2012年の18回党大会でも、彼らは同様の「投票」の洗礼を浴びた。得票数の多寡は党内序列に反映したといわれる。