イベルメクチンの売り上げが米で24倍に、コロナ治療のつもりが救急治療室が満杯に

2021年9月3日(金)16時50分
ジョン・ジャクソン

<アメリカでは家畜用の寄生虫駆除薬であるイベルメクチンをコロナ治療薬として勝手に服用し、具合が悪くなって救急車で運び込まれる患者が急増>

米オクラホマ州郊外のある医師によれば、馬用の寄生虫駆除薬に使われるイベルメクチンを新型コロナウイルス感染症の治療薬として過剰摂取した人々が、地元の病院の救急処置室を埋め尽くしているという。

同州東部と南部の複数の救急処置室に勤務しているジェイソン・マクエリエ医師は、地元テレビ局KFOR-TVに対して、「この薬の服用にあたって医師の処方が必要なのには理由がある。場合によっては危険だからだ」と述べた。

イベルメクチンを服用する人が増えている事態に、米食品医薬品局(FDA)をはじめとする複数の保健当局が厳重な警告を発信。この薬を、本来の目的以外で使用しないようにと呼びかけている。

マクエリエ自身、最近イベルメクチンの副作用で救急処置室を訪れた多くの人を診察したという。また彼は、この薬を服用して体調を崩した人々への対応で、救急車が足りない事態が発生しているとも指摘した。

銃で撃たれた患者の治療ができない

「救急処置室がいっぱいで、銃で撃たれた人々がなかなか治療を受けられない」「ベッドが空かないため患者が運び込めず、救急車が病院から離れられない状態だ」と、マクエリエは述べた。「救急要請の電話に応じられる救急車がなければ、患者の元に向かえる救急車もない」

マクエリエが処置をした患者は、イベルメクチンが新型コロナ感染症の治療に効果的だという誤った主張を信じており、また多くの患者が、過去に家畜にこの薬を使ったことがあるとして、薬の服用に不安を抱いていなかったという。

「郊外の小さな町で育った人々は、人生のどこかでイベルメクチンに馴染みがある。寄生虫駆除薬としてよく家畜に使われるからだ」と彼は説明した。

アメリカおよびカナダ各地の家畜用品店は、ここ数週間でイベルメクチンの売り上げが大幅に増えたと報告しており、これは人々が新型コロナの治療薬として服用していることが原因である可能性がある。

米疾病対策センター(CDC)は最近の声明で、「薬局や小売店でイベルメクチンの取り扱い量が増えているが、人間用に販売されているものではない」と説明した。

CDCは声明の中でさらに、「FDAは新型コロナ感染症の予防薬または治療薬として、イベルメクチンの使用を認可も承認もしていない」と述べた。「米国立衛生研究所(NIH)の新型コロナ感染症治療ガイドライン委員会も、現段階で、新型コロナ感染症の治療薬としてイベルメクチンを推奨する十分なデータはないと判断している」

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