インドの庶民を激怒させたビル・ゲイツ...大富豪はこの国に何をした?

2021年7月1日(木)20時25分
アクシャイ・タルフェ

インドにおけるゲイツとその財団の活動については、モディ政権の与党内からも懸念と批判の声が上がっている。18年4月にはモディの出身団体であるヒンドゥー至上主義団体・民族義勇団(RSS)系の政治団体スワデシ・ジャグラン・マンチ(SJM)が利益相反を理由に、当時ゲイツ財団のインド代表を務めていたナシケト・モーをインド準備銀行の理事会から外すよう求めている。

SJMはまた、ゲイツ財団が外資系の多国籍企業を儲けさせるために動いていると主張し、政府機関は「そのような組織と縁を切る」べきだと論じている。

国民会議派が政権を率いていた時代から、ゲイツ財団には疑惑の目が向けられていた。13年には連邦議会の保健・家族福祉常任委員会が同財団の支援する「医療における適切な技術プログラム(PATH)」について、臨床試験の手続きや医療倫理に反する行為があったと認定している。

国内2州で実施された子供向けHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの治験で7人が死亡する事件があり、この治験でのゲイツ財団の役割を調査したところ、倫理的な問題があったという。

モディ政権になって政府との関係が復活

当時のインド政府は、国内の予防接種関連事業からゲイツ財団を締め出すことでこの問題に対応した。だが政権交代後、ゲイツ財団は新たに予防接種技術支援ユニットを立ち上げ、インド政府との協力関係を復活させている。

現在も、ゲイツ財団とその助成を受けた企業・団体は衛生、健康、農業、家族計画などの分野で政府の施策に深く関与している。モディが政権を握って以来、ゲイツ財団が助成金の拠出を決めたプロジェクトはインド国内だけで363件に上る。

しかし今は、新型コロナの感染爆発と経済危機を招いたモディ政権への怒りが渦巻いている。モディとゲイツの蜜月が続く限り、ゲイツ財団への反発も高まるだろう。

©2021 The Diplomat

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