第一交通が相次いで配車アプリと提携 背後で糸を引くのはソフトバンク 

2018年3月6日(火)11時20分
加谷珪一

<影響はタクシー業界だけじゃない。ソフトバンクが操る、ウーバーの日本進出が意味するところとは...>

タクシー大手の第一交通産業と配車アプリの米ウーバーテクノロジーズが提携に向けて協議していることが明らかとなった。第一交通は、中国の配車アプリ滴滴出行(ディディチューシン)とも提携している。 

一連の動きはソフトバンクが糸を引いている可能性が高い。実はソフトバンクは出資を通じて、世界中の配車アプリを手中に収めている。社会のシェアリング化を見据えた陣取り合戦が水面下で行われている。

日本ではライドシェアが禁止されている

 

ウーバーはよく知られているように配車アプリの大手だが、同社のサービスには2種類ある。ひとつは正規のタクシーを配車するもの、もうひとつはタクシー以外の一般車を配車するものである。後者は一般にライドシェア(一般ドライバーが自家用車に乗客を乗せるサービス)と呼ばれる。 

日本では道路運送法などの規制によりタクシー以外の車両が有料サービスを提供することは、いわゆる「白タク」に該当するため原則として禁止されている。このため日本のウーバーは一部ハイヤー企業などと提携し、限定的に業務を行っている状況だ。 

ウーバーは昨年末、ライドシェアの普及を目指すという従来方針を撤回し、日本ではタクシー会社との連携に舵を切る方針を明らかにしていた。今回の第一交通との提携は、ウーバーの新しい日本戦略の第一歩ということになる。 

提携協議を進めている第一交通は、約8000台のタクシーを擁する業界大手の1社だが、実は第一交通は、中国の配車アプリ企業「滴滴出行」とすでに提携している。 

滴滴の配車アプリの登録者数は約4億4000万人に達している。同社はウーバーの中国事業も買収しており、世界最大級の事業者に成長した。訪日する中国人観光客の多くが、滴滴の利用者である可能性が高いことから、第一交通では、当面は中国人観光客を主なターゲットに事業を展開する。 

滴滴との提携がスタートしたばかりであるにもかかわらず、同社がウーバーとの提携も進めていることについては、ある事情が関係している可能性が高い。それはソフトバンクの動きである。

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