アングル:「トランプおろし」はあるか、大統領失職の手続き

2017年8月19日(土)08時42分

[17日 ロイター] - トランプ米大統領は、ロシアが昨年の米大統領選に干渉した疑惑、いわゆる「ロシアゲート」を巡る対応で強い批判にさらされている。モラー特別検察官の捜査をトランプ氏が妨害しようとしている、というのだ。

与党・共和党が上下両院とも優勢な議会では「トランプおろし」を本格的に求める声は、まだほとんど聞こえてこない。ただ一部の民主党議員は、歴史上滅多に目にされてこなかった弾劾手続きに言及している。

また合衆国憲法修正第25条は、それとは別の形で大統領の権限を奪う方法を提示しているものの、これも実際に使われた例はない。

では具体的に、大統領は辞任する以外でどうやって職を追われるのだろうか。

<弾劾>

合衆国憲法の下では、大統領と副大統領、その他公職者は、弾劾されて反逆および収賄、その他の重罪や非行で有罪と判定されれば、罷免される。

手続きが始まるのは下院。どの議員でも、通常の法案と同様に弾劾決議を提案できる。または下院が審問を正当化する決議を可決すれば、手続きを進められる。

慣例では下院司法委員会が弾劾手続きを担当し、委員会の過半数が賛成すれば決議が承認される。その段階で下院多数派の院内総務(今なら共和党のケビン・マッカーシー氏)が、決議を本会議で採決するかどうかを判断する。本会議でも委員会と同じく、過半数の賛成で決議が成立する。

下院で決議が成立した場合、上院議員が裁判の陪審員役となり、定数100人の3分の2(67人)が有罪と判定すれば、大統領が実際に免職となる。大統領が弾劾・罷免されると、現任の副大統領が次の大統領選で当選者が決まるまで職務を遂行する。

過去に弾劾された大統領は、1868年のアンドルー・ジャクソンと1998年のビル・クリントン氏の2人だけ。いずれも上院で無罪とされた。1974年のリチャード・ニクソンは弾劾がほぼ確実という状況で自ら辞任した。

<修正第25条>

合衆国憲法修正第25条は、1963年のジョン・ケネディ氏暗殺を受けて1967年に採択され、大統領が職務遂行能力や副大統領の引き継ぎに関する問題をクリアにしている。

その第4節によると、副大統領および行政各部の長官の過半数、もしくは議会が法で定める機関の長の過半数が、大統領が権限と使命の遂行が不能になったと宣言できる。この宣言を上院議長代行と下院議長が受け取れば、副大統領が大統領の職務を代行することになる。

大統領は、自分には職務遂行能力があると上下両院トップに伝えて返り咲くことは可能だ。ただし宣言後4日以内に、副大統領と行政各部長官の過半数、議会が法で定める機関の長の過半数が改めて議会に大統領は職務遂行不能だと申し立てれば、議会が48時間以内にどうするかを決めなければならない。

上下両院の3分の2が大統領は職務を遂行できないと判断すれば、副大統領が代行を続け、大統領は復帰が不可能となる。

これまで修正第25条の第3節、大統領が一時的に職務を副大統領に移譲(例えば手術などで)できるという規定は発動されたことがあるが、第4節は一度も行使されていない。

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