サイバー攻撃、世界で被害拡大 企業なお対応に追われる

2017年6月29日(木)10時15分

[フランクフルト/ワシントン 28日 ロイター] - 27日に発生した大規模サイバー攻撃は、一夜明けた28日もインドなどの港で操業に影響が生じ、オーストラリアのチョコレート工場で生産が止まるなど、世界各地で被害が拡大、各企業が対応に追われた。

リスクモデル構築を手掛ける米サイエンスによると、今回の攻撃と5月に発生したランサムウエア(身代金要求型ウイルス)「ワナクライ」を使った攻撃による経済損失は合わせて80億ドルにのぼる見通しだ。

今回の攻撃は、専門家の間で「GoldenEye」または「Petya」と呼ばれるウイルスが使われたとみられている。

デンマークの海運・石油大手、モラー・マースクは注文処理などに支障が出て、傘下企業が運営する76港の一部が過密状態となった。

マースクは28日夜、システムが復旧したことを明らかにした。

米宅配大手のフェデックスは、傘下オランダのTNTエクスプレスが大きな影響を受け、中国国有穀物会社の中糧集団(COFCO)が運営するアルゼンチンの港湾など南米にも被害が拡大した。

仏金融大手BNPパリバの不動産部門や米製菓モンデリーズ・インターナショナルなども影響を受けたほか、オーストリアでも少数の国際的企業が被害を受けた。

警察やサイバー問題の専門家によると、ウイルスは前日、ウクライナで確認されたとみられる。ユーザーらが人気の税会計ソフトをダウンロードした後か、地元のニュースサイトを閲覧した後に、コンピューターに感染したという。

影響を受けた複数の国際的企業が、ウクライナで事業を展開している。世界中に張り巡らせた企業ネットワークを通して感染が拡大したとの見方が出ている。

スロバキアのセキュリティソフト会社ESETは、攻撃の影響を受けた同社の顧客のうち8割がウクライナで感染し、次いでイタリアでの感染が1割程度を占めたと明らかにした。

専門家は今回の攻撃について、失われたデータの復旧ができない強力な消去ソフトを用いており、身代金ではなくウクライナ中でシステムに障害をもたらすことが狙いだったとの見方を示している。

また、過去に英政府の通信当局に勤務し、現在は民間セキュリティ会社PGIサイバーのマネジング・ディレクターを務めるブライアン・ロード氏は「国家が代理人を通じて活動しているような様相を呈してきた」と語った。

ウクライナはこれまでに、ロシアが2014年のクリミア併合以降、ウクライナ国内のコンピューターネットワークやインフラを標的にサイバー攻撃を仕掛けてきたと繰り返し非難している。

ロシアは一貫してこれを否定してきたが、28日も攻撃の発生源について情報は得ていないと表明した。今回の攻撃では同国の石油大手ロスネフチや製鉄会社なども影響を受けている。

*写真を追加します。

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