米国は制裁強化で北朝鮮に圧力、司令官は空母攻撃可能と言明

2017年4月27日(木)12時44分

[ワシントン 26日 ロイター] - トランプ米政権は26日、北朝鮮について、制裁強化を通じて核・弾道ミサイル計画断念へ圧力を掛けるとともに、交渉の扉を開いておくのがトランプ大統領の戦略であると表明した。

一方、ハリス米太平洋軍司令官は同日、空母カール・ビンソンはフィリピン海を航行中で、必要となれば北朝鮮を2時間で攻撃できる位置にあると明らかにした。また、北朝鮮のミサイルや核兵器の脅威が増大していることを踏まえると、米国はとりわけハワイなど、ミサイル防衛能力の強化が必要な可能性があるとの認識を示した。

対北朝鮮対策で「あらゆる選択肢を検討している」と繰り返し警告していたにもかかわらず、トランプ政権は、全上院議員を対象としたホワイトハウスでの異例の会合後に発表した声明のなかで、非軍事的手段を尽くすという米国の姿勢を示した。

ティラーソン国務長官、マティス国防長官、コーツ国家情報長官は、共同声明を発表し、北朝鮮を「国家の安全保障にとって差し迫った脅威であり外交政策の最優先事項」と指摘。

「米国は朝鮮半島の安定と平和的な非核化を求めている。その目標に向け、われわれは引き続き交渉にオープンである。しかし、われわれは引き続き自国および同盟国を防衛する用意がある」と表明した。

緊迫度を増す北朝鮮の核・ミサイル問題は、トランプ大統領が直面している最も重大な安全保障上の課題だ。大統領は北朝鮮による米国を標的とした核ミサイル攻撃を阻止すると約束しているが、専門家はそのような能力を北朝鮮が保有する可能性があるのは2020年以降だとみている。

「大統領の姿勢は、経済制裁を強化し、同盟国や地域のパートナーたちと共に外交的手段を遂行することによって、北朝鮮が核や弾道ミサイル、そしてそれらを拡散させる計画をやめるよう圧力をかけることを目的としている」と共同声明で述べている。

トランプ政権は軍事攻撃は選択肢の1つとする一方、北朝鮮が大規模な報復を仕掛けてくるリスクを考えると、主要な戦略としては制裁を強化することだと米当局者らは強調する。基本的にはオバマ前政権の政策を踏襲するものだ。

民主党のクリストファー・クーンズ上院議員は会合後、記者団に対し、軍事的選択肢について議論されたことを明らかにした。

「身が引き締まるような説明会だった。もし軍事的選択肢を準備しなければならなくなった場合、どれだけの議論と計画が必要であるかが明らかにされた。均整のとれた、明確な外交戦略が示された」と同議員は語った。

<日米韓攻撃の可能性>

ハリス司令官は議会証言で「北朝鮮が能力を持てば、日米韓を攻撃することはないとのあなた方の自信を共有しない」と指摘。ハワイの防衛は当面は十分だが将来的に不安があるとし、北朝鮮がミサイルを発射した場合に備え、新たなレーダーや迎撃機の配備を検討することを提案した。

韓国に配備を進めている新型迎撃ミサイルTHAAD(サード)については、数日以内に稼動可能な状況になるとの見方を示した。

さらに、近く南シナ海で一段の「航行の自由」作戦が行われるだろうとも述べた。

米軍は北朝鮮への威嚇のため、空母カール・ビンソンからなる空母打撃群に朝鮮半島沖に向かうよう指示。韓国の基地に25日入港した米原子力潜水艦「ミシガン」と合流させる。韓国の海軍は先に、米軍の空母打撃群と演習を行うと発表している。

北朝鮮は自国領土に対し、攻撃の兆候があった場合、米国とそのアジア同盟国を攻撃すると明言している。

<深刻な懸念示す議員も>

一部の民主党議員はホワイトハウスで行われた上院議員への説明は、ただの「遠足」で写真撮影以上のことはほとんど行われなかったと批判。

共和党議員はこれよりも肯定的な見解を示したが、高く評価する声は出ていない。ボブ・コーカー上院外交委員会委員長は記者団に対し「まあまあの説明だった」と評したうえで、「説明を今日行った意味がよく分からない」と語った。

上院軍事委員会のジョン・マケイン委員長は、トランプ政権に確固たる戦略があるかどうかについて聞かれ、「現在策定しているところだ」と述べた。

下院議員らからは説明を行った政権幹部らを信頼する声が聞かれたが、中には深刻な懸念を示す議員もいた。

下院外交委員会委員のブラッド・シャーマン氏は、トランプ政権が北朝鮮の行動を抑制するために十分な措置を講じるという確信はないと指摘。「決意の度合いは非常に控えめで弱く、まやかしと言ってもいいぐらいだ。北朝鮮に十分な圧力をかける唯一の方法は、中国が圧力をかけるよう仕向けることだ」と語った。

下院軍事委員会のマック・ソーンベリー委員長は、トランプ政権は北朝鮮が核開発を放棄するよう「さまざまな」手段を活用するつもりだと述べ、すべての選択肢を検討するという方針に賛成すると語った。

「われわれはこの地域で、ミサイル防衛を含め驚異的な軍事的存在感を示す必要がある」とした。

*内容を追加します。

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